研究課題
次世代拡散MRI(magnetic resonance imaging)により、広く使われている従来の拡散調像に関する過去の知見の限界が目立つようになってきた。従来の臨床機ではコントロール困難なため無視されてきた拡散時間の違いにより拡散MRIの定量値は変化する。今回我々は、次世代拡散MRIを用いて、拡散時間を考慮して従来の拡散強調像の概念の一新を行い、より病態を反映する新たな微細構造の解明を進めてきた。その違いを加味した拡散MRIの新たな定量値と他の手法を合せ、最新技術を駆使して微細構造を明らかにしてきた。具体的には、短い拡散時間により粘稠度と空間的拡散の違いを明らかにして、従来の知見を一新するために、次世代MRIを用いて in vivoでヒトの軸索や神経突起の変化、線維のビーズ状変化などを考慮したより詳細な回路・微細構造の解明を進めてきた。検証のために、Synthetic MRIなどによる定量値やマウス透明脳との比較検討も進めてきた。1)拡散時間を変えて粘稠度の違いと制限拡散の違いを持つファントムおよび、空間的制限拡散の脈絡叢肉芽腫などで、拡散時間と信号強度の詳細な検討を行った。短い拡散時間はOGSE,長い拡散時間は従来の方法やSTEAMなどで計測する。2)従来の拡散強調像で高信号を示す疾患に絞って、OGSEで拡散時間を短くするとどのように信号強度が変化するかを検討し、粘稠度、空間的制限拡散のどちらによる高信号であったかを検討する。腫瘍についてまとめ2021年中に発表する。3)OGSEを行った疾患で、次世代拡散MRIやSynthetic MRIなどの最新のMRIも行われている症例につき、さらに微細構造変化につき詳細な検討を行う。マウスでの実験の治験も合せ、MRIを用いた微細構造の研究を進める。
2: おおむね順調に進展している
拡散制限を来す疾患につき、Oscillating gradient spin-echo (OGSE)を行い、epidermoid cyst (Christina A, MRMS), 急性期脳梗塞(Boonrod A,Neuroradiology2018)、choroid plexus cyst(MRI, 2019), 脳腫瘍(MRI 2020), 脳梁膨大部病変(MRMS 2020)で報告を行った。粘稠度の異なる液体についての基礎的検討も行った(Maekawa T, Jpn J Radiol 2018)。画像処理への人工知能の活用が急速に進んでいること、脳腫瘍分野での解析を更に進めるため、その対応のため予算を残した。
画像関連でのAIの進歩は著しく、拡散関係でもできるだけ取り入れて研究を進めたい。具体的にはdeep learning reconstructionによるノイズ除去の応用がある。拡散MRIの微細構造情報をノイズとして除去しないようなAIの開発とその検証を行なう。また、この研究で得られた多くの臨床例の画像について更に検討し、下垂体腺腫、聴神経腫瘍、髄膜腫などで微細構造変化と鑑別への応用を検討する。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)
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