研究課題/領域番号 |
18H02774
|
研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
辻 厚至 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 分子イメージング診断治療研究部, グループリーダー(定常) (60303559)
|
研究分担者 |
眞鍋 史乃 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 専任研究員 (60300901)
安永 正浩 国立研究開発法人国立がん研究センター, 先端医療開発センター, 分野長 (80450576)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 核医学治療 |
研究実績の概要 |
抗体を利用した放射免疫療法(Radioimmunotherapy, RIT)は,血液癌での臨床での有用性は示されているが,固形癌での有用性は,動物モデルのみで,臨床では未だ示されていない。この大きな原因のひとつは,血液癌と違い,固形癌では間質が非常に多く,薬剤到達を阻む間質バリアが存在するが,これを克服するRIT戦略が描けていないからである。そこで,固形癌に有効な新しいRIT戦略の確立を目的として研究を実施した。これまでに,癌間質を標的とする抗体をIn-111標識し,その性能評価を5種類の固形癌モデル腫瘍を形成させたマウスで実施した。これら5種類の固形癌モデルは癌間質やそれを誘導する生体分子の発現が異なる。放射性標識抗体を投与し,SPECT/CTイメージングおよび体内動態試験を実施した結果,癌間質が豊富な固形癌モデルに高集積することが明らかとなった。また癌間質形成に関わる分子の発現に相関することも明らかとした。癌間質が豊富な固形癌モデル腫瘍に高集積することは蛍光標識抗体でも実証した。治療用放射性核種に変えて抗体を投与した場合,腫瘍に40Gyを照射できると推定された。この癌間質が豊富な固形癌モデルはRITを始めとする各種抗癌治療に抵抗性を示すことも別実験で明らかにしており,今年度は,治療評価を実施した。抗体をβ線放出核種Y-90で標識し,間質が豊富な膵癌モデルに投与して治療効果を評価した。統計的有意に腫瘍増殖を抑制することを明らかにした。腫瘍縮小効果も見られ,これまでのち療法よりも効果が高いことが明らかとなった。膵癌治療法として有望であることが示された。さらなる治療効果を高めるために,リリース型ADCの開発に取り組んだ。リンカーを変えることで治療効果を高めることを見出した。完治を目指し研究を継続する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
癌間質が豊富な固形癌モデルでの治療効果評価を実施し,期待以上の治療効果を得るなど,計画通りに進捗しているため。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度に見出したリンカーを利用して新たな治療オプションの効果を検証していく予定である。
|