研究課題/領域番号 |
18H02775
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
齋藤 則生 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 研究部門付 (80344191)
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研究分担者 |
山口 英俊 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 研究員 (10783194)
田中 隆宏 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (30509667)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 線量計測 / 医療用粒子線 |
研究実績の概要 |
カロリーメータ用の制御装置の開発ならびに評価を行った。今回開発中の制御装置は、直流駆動のホイートストンブリッジ回路とナノボルトメータを組み合わせたものである。ブリッジ回路の可変抵抗の範囲を0Ωから25kΩ(5Ωステップ)と、これまでの可動範囲の2倍以上にした。これにより、カロリーメータの動作温度ならびに線量範囲を拡大することが可能となる。開発した制御装置の性能を評価するため、標準抵抗をつなぎ、抵抗値の精密計測を行った。その結果、カロリーメータの精密制御にはSN比を2倍程度改善する必要があることが分かった。 アラニン線量計については、研究計画通り粒子線(290MeV/n 炭素線)に対する応答特性の評価を行った。物理線量が均一な拡大ブラッグピーク(sSOBP)、物理線量が均一でない(生物学的効果比を乗じることで線量が均一となる)拡大ブラッグピーク(rSOBP)、プラトー領域の三種類のビームを、空気中でアラニン線量計に照射した。線量を変えて複数個のアラニン線量計に照射することで、それぞれのビームの校正曲線を取得した。これらの結果を、ガンマ線を照射したアラニン線量計の校正曲線と比較した。得られた校正曲線は、どのビームでも線量と信号値の間に線形性があることが確認できた。校正曲線の傾きはガンマ線、プラトー領域、rSOBP、sSOBPの順に大きい結果となった。rSOBPとsSOBPの傾きは近い値を示していた。以上の結果から、アラニン線量計が粒子線のビームのLETに依存して応答が変化することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カロリーメータについては、制御装置の開発ならびに評価を行った。制御装置は、直流駆動のホイートストンブリッジ回路とナノボルトメータで構成し、測温抵抗体の抵抗値の数キロΩをミリΩの精度で測定できることを目標に設計した。その結果、カロリーメータの精密制御には十分なSN比ではなく、直流回路固有のノイズ成分の除去が必要であることが明らかとなった。そのため、回路系の遮蔽の強化ならびにグラウンドの見直しなどのノイズ低減に向けた改造を進めている。 アラニン線量計については、本年度は実験においてLET依存性を確認することができた。LETが大きくなるほどアラニン線量計の校正曲線の傾きが小さくなっており、信号値が小さいほど信号ノイズ比が小さくなり不確かさが大きくなる傾向があるため、LETの小さいプラトー領域で第三者出力線量評価を行うことが望ましいと考えられる。本年度は、来年度以降に第三者出力線量評価を模擬するための固体ファントムの加工設計を行った。固体ファントムにアラニンペレットを4つのみ封入できるようなもの、アラニンペレット4つと電離箱線量計を固定できるもの、電離箱線量計のみを固定できるものの3パターンを設計した。
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今後の研究の推進方策 |
カロリーメータについては、今年度明らかとなった制御装置のSN比の改善に向けた改良を行い、重粒子線治療装置での測定を目指すことが基本的な推進方針である。そのためには先ずは回路系の遮蔽の強化ならびにグラウンドの見直しを行い、直流回路固有のノイズ成分の低減を図る。もし直流駆動で十分な精度を得ることが難しい場合は、交流駆動式への移行を検討する。制御装置の精度の確認が取れ次第、重粒子線施設にカロリーメータを持込み、吸収線量の測定を行う。 アラニン線量計については、来年度は、本年度設計した固体ファントム中にアラニン線量計を固定し、実際の第三者出力線量評価を想定した形でアラニン線量計への照射を行う。本年度に加工設計したアラニン線量計を封入できる固体ファントムのうち、どれが最も第三者出力線量評価に適しているか確認する。また、固体ファントム中において線量を変化させて照射し、校正曲線を取得する。
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