研究実績の概要 |
本年度はMODY1~6遺伝子に変異を有さない発端者2名について全ゲノムシークエンスを実施し、3,614,470~3,663,511の点変異を検出した。また、構造変異として、26~32のCNV、1,488~2,907の大規模挿入、3,553~4,939の大規模欠失を検出した。RNA-seqのデータから遺伝子発現との関連が得られ、十分な実験データの根拠を持つ転写調節因子結合領域の多型・変異は39,433ヶ所認められており、全ゲノムシークエンスから得られた多型・変異のうち、約8割が転写調節因子結合領域に位置していた。また、エンハンサー領域の機能異常に起因する疾患要因として既報のMODY1~6遺伝子発現を制御する可能性も高いため、既知MODY遺伝子におけるTAD領域を精査したところ、MODY 2, 3とそれ以外で異なり多様性が認められた。また、レギュローム以外の分子遺伝学のマルチ戦略の統合により細胞骨格分子であるMYO5Aを有力な新規MODY候補遺伝子として同定し報告した。 一方、超高感度質量分析器に代表者が同定した世界初の2型糖尿病感受性遺伝子カルパイン10(CAPN10)を供して解析し、微小管結合蛋白(MAP1B)が標的基質であることを見出した。CAPN10欠失マウスを用いた解析の結果、CAPN10の発現の低下によりMAP1Bの切断が障害され、微小管機能とアクチン再構築の障害が起こり、インスリン分泌顆粒の細胞内輸送の異常が生じることを見出し報告した。興味深いことに、MAP1Bと先のMODY研究で獲得したMYO5Aは細胞骨格における重要なパートナーであり、インスリン分泌において協調している可能性を見出した。
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