研究実績の概要 |
CGH解析により、連鎖解析やエクソーム解析では捉え難いアリル欠失CNVについて、60領域(領域内157遺伝子)を同定し、その後コモン欠失(5%以上)を除いて欠失領域内でMODY候補遺伝子を14個獲得した。家系内での集簇状況、対照サンプルでのCNVスクリーニングにより候補遺伝子を7個(DPF1, VSIG10L, ERAP2, RUFY1, SYNE1, FOXD4L3, LOC572558)にまで絞り込んだ。一方、6種類の既知メジャーMODY蛋白は互いに密接に連携した転写因子ネットワークを構成しており、臨床像が類似する未知MODYの原因遺伝子も、同ネットワークに属する転写因子または標的分子をコードすると推定された。種々のアルゴリズム (GeneMANIA) に従って、6種類の既知メジャーMODYコード蛋白とエクソーム解析で獲得できたMODY候補遺伝子群(MYO5A, CASZ1, MLLT10, BRWD1, CELSR1, TENM1, SRCAP, KAT6A, PSMD2, COPB1, CELSR2等)をマップしたところ「膵島機能ネットワーク」で互いが密接にリンクしていることが確認できた。そこで、さらにISHで検出された膵島の高発現遺伝子群(KIAA1946, BEX2, GNAZ, HMP19, CNNM1, TMEM130, SCG2, ADM2等)をプロットして、6種類の既知メジャーMODY分子に近傍の候補遺伝子から順に約550家系の未知MODY様症例で解析を施行して幾つかの新規MODY候補遺伝子変異を同定した。一方、新規サンプルに関しても、適宜昨年度確立したNGSを用いた我々独自のMODY候補遺伝子パネルを用いてスクリーニングを進めた。HGMDに基づいたアミノ酸置換の評価から、新たに日本人初のRFX6変異やMODY3 (HNF1A)とMODY12(ABCC8)の合併症例を同定しており今後インスリン治療からの離脱試行など治療選択にも手がかりを与えた。他にも幾つかの既知のMODY遺伝子や単一遺伝子異常による糖尿病の原因遺伝子にACMG分類基準にもとづいて病的様変異を同定できたが、これらに関しては今後の症例蓄積や機能解析による検討も考慮すべきと考えられた。
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