研究課題/領域番号 |
18H02789
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中川 勇人 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (00555609)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 非アルコール性脂肪肝炎 / 肝細胞癌 / アシルカルニチン |
研究実績の概要 |
1. マウスモデルの結果に基づき、NAFLD241症例の血清中アシルカルニチン精密分析を行ったところ、ヒトにおいてもNAFLDの病態によって血清アシルカルニチン分画が変化し、バイオマーカーとなりうることがわかり、同結果を論文化するとともに(Sci Rep. 2019)、特許を取得した(特許第6592637特許、第6592638号)。現在、バイオマーカーとしての有用性だけでなく、病態における役割についてさらに解析をすすめている。 2. ビタミンD誘導体について、絶食後再摂食による脂質生合成誘導モデルを用いて、in vivoでSREBP機能を阻害する化合物を複数同定、さらにob/obマウスを用いて長期投与を行い、脂肪肝における有用性を確認することもできた。 3. 一方、SREBP活性化を伴ってNASHから肝細胞癌を発症する肝臓特異的PTEN欠損マウスに、SREBP活性化に必須の分子SCAPを欠損させ(PTEN/SCAP DKOマウス)、肝臓特異的PTEN欠損SREBP不活性化マウスを作成したところ、むしろ肝臓の病態が悪化することがわかった。そこで肝臓組織を用いたトランスクリプトーム解析およびメタボローム解析を行い、病態悪化に寄与する候補分子や代謝産物のスクリーニングを行った。 4. NASH進展・発癌におけるASK1の役割については、これまで全身ASK1欠損マウス、肝細胞特異的ASK1欠損マウス、骨髄細胞特異的ASK1欠損マウスを作成し、そのNASH発癌における役割を解析してきたが、骨髄細胞特異的ASK1欠損マウスにおいてのみ発癌が抑制されることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アシルカルニチンのNAFLDバイオマーカーとしての有用性を見出し、論文化・特許取得を達成した。また脂質背合成阻害作用を有するビタミンD誘導体の導出、マウスモデルを用いたNASHおよびNASH関連肝癌の病態解明に関する実験計画についても、当初の予定通り進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
1. アシルカルニチンのバイオマーカーとしての有用性だけでなく、病態における役割についてさらに解析をすすめる。 2. ビタミンD誘導体については、これまでに有効性が確認された化合物を用いて、NASH治療薬や抗腫瘍薬としての可能性を探索する。 3. PTEN欠損マウスで脂質生合成を阻害するとむしろ病態が悪化するメカニズムについて、トランスクリプトーム解析およびメタボローム解析の結果得られた候補分子や代謝産物に着目してさらに解析を進める。 4. NASH肝癌におけるASK1阻害の影響については、骨髄細胞特異的ASK1欠損マウスにおいてのみ発癌が抑制されたメカニズムを明らかにしていく。
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