研究実績の概要 |
難治性消化器癌の多くは腸上皮化性を介することに着目し、腸上皮分化システムによる悪性形質獲得機構を解析することで、臓器横断的な共通の難治化機構を解明することを目的とする。申請者が独自に解明したIBD付随大腸癌における腸上皮形質とスキルス化・癌幹細胞誘導機構を基盤として、膵癌・バレット食道癌など近年増加している消化器難治癌全般にまで発展させることで、癌難治化を「癌遺伝子」ではなく「癌細胞形質」から繙くことにより新しい共通の難治化機構の同定を試みる。臓器間共通難治化機構の解明はこれまでと異なる機序の治療薬開発のみならず腸上皮化性抑制による発がん予防まで期待できる。本学病理部保管の病理標本より、正常10例、浸潤性膵管癌10例、IPMN(胃型・腸型・膵胆道型・好酸性細胞型)各病型10例・合計40例、膵管内乳頭粘液性腺癌(IPMC)各型10例 合計40例)のプレパラートを作成した。IPMN病型解析に関しては、胃(Sox2, Shh)腸(CDX2, Atoh1, Klf4)膵(Pdx1)への分化制御因子に関する発現を確認した。一方、膵癌細胞株を用いてCDX2、Atoh1の発現解析を行うと共に、CRISPR Activation Plasmid®を用いて発現誘導させた後、悪性度評価を行った。その結果腸型IPMNではAtoh1が発現しており、膵癌細胞株へのAtoh1発現導入により腸型IPMNの形質を獲得することを発見した。以上より、腸分化形質は膵IPMNの悪性形質を制御することが示唆された。
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