本研究では肝癌間質細胞社会の成り立ちを明らかにするため、ヒト新鮮外科切除標本から単一浮遊細胞液を作成し、血管内皮細胞、線維芽細胞、免疫担当細胞における遺伝子発現プロフィールを解析、その多様性について検討する。2018年度には肝がんおよび末梢血単核球を用いて1細胞トランスクリプトーム解析を行う組織処理法の調整を行った。特に末梢血単核球の中でも白血球以外の分画と考えられるCD45陰性細胞集団のMACSを用いた細胞の精製法の確立を試みたが、残念ながらテストリードでは1細胞トランスクリプトーム解析を行うに十分なクオリティを得ることはできなかった。そこで、CD45陰性細胞集団にこだわらずに細胞のサイズなどいくつかのサブセットに分けて末梢血単核球の細胞集団の解析を行うプロトコールに変更した。一方、肝細胞がん組織については1細胞トランスクリプトームを行うに十分なクオリティのサンプルを調整する方法が確立できた。 また、2018年度には肝がん患者および健常人における末梢血単核球の細胞分画の比較を行い、特定のケモカイン受容体陽性細胞分画に違いがあることを見出した。一方、このケモカイン受容体のリガンドは肝細胞がんの中でも極めて予後が不良な上皮幹細胞型肝細胞がんで発現が亢進していることを同定した。ケモカインリガンドの血清レベルは肝細胞がん外科切除症例の予後に関わる事、ケモカイン受容体陽性細胞は腫瘍内のマクロファージで発現が認められることから、肝がんの間質細胞集団におけるマクロファージの予後不良肝がんにおける役割が示唆された。
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