研究課題/領域番号 |
18H02794
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
水腰 英四郎 金沢大学, 医学系, 准教授 (90345611)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ネオアンチゲン / 細胞傷害性T細胞 / エピトープ / T細胞レセプター / 遺伝子改変T細胞 / 免疫治療 / ペプチドワクチン / ヒトテロメラーゼ逆転写酵素 |
研究実績の概要 |
当教室において樹立した4種類の肝癌培養細胞の全エクソーム解析からネオアンチゲン候補となる遺伝子変異を同定し、各HLA分子に結合する細胞傷害性T細胞(CTL)エピトープの候補となるペプチドのアミノ酸配列を決定した。 また、ネオアンチゲンならびにそのCTLエピトープの解析と平行して、上記培養細胞が発現する腫瘍関連抗原とそのCTLエピトープを4種類同定した。これらはアルファフェトプロテイン(AFP)、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)、多剤耐性関連蛋白(MRP3)由来のCTLエピトープであり、その抗原エピトープを認識するT細胞レセプター(TCR)遺伝子を、前年度と同様に引き続き複数種類クローニングし、肝癌培養細胞に対してより強い傷害活性を示すものを取得した。 さらに、同TCR遺伝子を用いて遺伝子改変T細胞を作製した。前年度に試験的に作製した抗原特異的な肝癌培養細胞に対する傷害活性の強さ、活性発現までの時間を測定できるアッセイ系を改良し、確立した。 上記CTLエピトープ特異的な免疫応答の特徴を肝癌患者において明らかにするために、過去に実施したペプチドワクチン臨床試験の患者検体を用いた解析を開始した。これらの解析結果では、ワクチン投与後の抗原エピトープ特異的な免疫応答の誘導効率は、癌の進行度や分化度などの腫瘍因子よりも、投与したペプチド自体の抗原性によって決まることを確認した。また、AFPならびにhTERT特異的な免疫応答の新規誘導は患者の全生存期間の延長に寄与するこを明らかにした。これらのエピトープ特異的な免疫応答はワクチン開始後5年の経過を経ても患者末梢血において検出が可能であった。今後、上記CTLエピトープ特異的な免疫応答を効率的に誘導するための、また長期間維持するための宿主条件を明らかにする目的で、免疫細胞プロファイルの解析を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の主要な課題である肝細胞癌におけるネオアンチゲンの同定に関して、そのCTLエピトープのアミノ酸配列の決定に関する解析がやや遅延している。また、試験的に作製したペプチドを用いた解析では、肝癌培養細胞に対する細胞傷害活性が得られていない。TCR遺伝子を用いた遺伝子改変T細胞の作製に関しては、複数の腫瘍関連抗原特異的なTCR遺伝子を用いて作製に成功している。 さらに、肝癌培養細胞とTCR遺伝子改変T細胞を用いた、傷害活性を測定するアッセイ系の確立に関しても、さらに測定技術の改良を含め順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は当初の計画どおり、同定した肝癌培養細胞の遺伝子変異とそのアミノ酸配列から予測したネオアンチゲンのエピトープとなりうる部位に対するペプチドをさらに複数合成し、肝癌患者ならびに健常者の末梢血リンパ球を用いて、肝癌特異的な細胞傷害活性を測定し、免疫治療の標的として最適なものを選択し、そのTCRを取得する。 一方、上記検討が予定通りに進行しない事態も想定し、すでにこれまでの研究で同定に成功した腫瘍関連抗原由来のCTLエピトープとそのTCRを用いて、以下の検討を進める。 1)これらの腫瘍関連抗原に対する免疫応答を効率的に誘導できる宿主の条件を明らかにする。 2)これらの免疫応答の長期にわたる生体内での変化を肝癌患者の末梢血リンパ球を用いて明らかにする。
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