研究課題
肝細胞アポトーシスがDNA損傷による肝発癌・癌進展に与える影響を検討した。DNA損傷肝発癌マウスモデルとして、2週齢でジエチルニトロサミン(DEN)を単回投与した。肝細胞アポトーシス亢進モデルとしてアポトーシス抑制蛋白の1つであるMcl-1を肝細胞特異的に欠損させたMcl-1 KOマウスを使用した。DEN投与野生型マウスとDEN投与Mcl-1 KOマウスを比較検討した。血清ALT値、血清caspase3/7活性、TUNEL陽性肝細胞数は、2週齢(DEN投与後48時間)では野生型マウスとKOマウスに有意差を認なかったが、6週齢および18週齢では野生型マウスに比してKOマウスでは有意に高値で、アポトーシス亢進を認めた。18週齢での肉眼的腫瘍形成率、顕微鏡的腫瘍形成率は、野生型マウスではいずれも0%(0/12)であったが、KOマウスではそれぞれ89%(8/9)、100%(9/9)であり、KOマウスで有意に発癌した。腫瘍部の組織像は高分化型肝細胞癌に類似し、Glypican-3やAFPの遺伝子発現上昇を認めた。DNA損傷をリン酸化H2AXおよび酸化ストレスマーカーとしての4-HNEを免疫染色で検討したところ、いずれも6週、18週齢では野生型マウスにしてKOマウスでは有意に高値であった。また、炎症性サイトカインであるTNF-αの発現は、野生型マウスの肝臓に比してKOマウスの肝臓で有意に高値であった。肝細胞アポトーシス亢進状態では、DENによる肝発癌は促進された。この発癌促進には酸化ストレスによるDNA損傷持続やTNF-αの上昇が関与する可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
肝細胞アポトーシスの存在が、肝発癌を促進させることを動物モデルにおいて明らかにすることができた。また、アポトーシス持続肝臓においては、酸化ストレスによるDNA損傷持続やTNF-αの上昇などを認めており、肝発癌促進機序に関与する候補因子も同定できている。また、TNF-αと酸化ストレスの関係についても、細胞実験で興味深い結果が得られている。これらの結果から、本研究課題はおおむね順調に進展していると考える。
肝細胞アポトーシスの存在が肝発癌を促進させる機序として、酸化ストレスやTNF-αの上昇が関与するかを検討する。具体的には、DEN投与のMcl-1欠損マウスに抗酸化剤の投与やTNF-αの遺伝子欠損などにより、肝発癌が抑制されるかを検討する。また、形成された腫瘍についても、遺伝子変異パターンなどを検討し、腫瘍の性質が変化するかを検討する。
すべて 2018
すべて 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件)