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2019 年度 実績報告書

肝臓における細胞死を起点とした細胞間コミュニケーションと病態形成

研究課題

研究課題/領域番号 18H02795
研究機関大阪大学

研究代表者

竹原 徹郎  大阪大学, 医学系研究科, 教授 (70335355)

研究分担者 阪森 亮太郎  大阪大学, 医学系研究科, 助教 (10644685)
疋田 隼人  大阪大学, 医学系研究科, 助教 (20623044)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード肝星細胞 / オートファジー / マクロファージ
研究実績の概要

・LX-2細胞のオートファジーは、各種肝癌細胞株と共培養すると亢進した。FACSにて癌細胞とLX-2細胞を分離し肝癌細胞の細胞数を定量すると、肝癌細胞数は共培養により増加した。LX-2のAtg7を欠損すると、肝癌細胞に対する細胞増殖促進効果は抑制された。免疫不全マウスに肝癌細胞をLX-2と共移植すると、肝癌増殖は促進した。共移植するLX-2のAtg7を欠損すると、腫瘍増殖促進は抑制された。肝星細胞特異的Atg7欠損マウス、野生型マウスにストレプトゾトシンと高脂肪食による肝発癌を誘導した。20週齢の肝星細胞特異的Atg7欠損マウスでは野生型マウスに比して、背景肝のヒドロキシプロリン量、シリウスレッド陽性領域は減少した。腫瘍個数・最大腫瘍径は有意に小さく、腫瘍部のASMA陽性細胞は減少した。単培養時のLX-2細胞、肝癌細胞と共培養時のLX-2細胞、肝癌細胞と共培養時のAtg7 欠損 LX-2細胞の遺伝子発現をRNAシークエンスで網羅的に解析し、共培養により発現が上昇し、Atg7欠損により増加が軽減した分泌タンパクをいくつか同定した。
・非アルコール性脂肪性肝疾患では、肝細胞のFoxM1の上昇を認めた。Dox誘導下で肝細胞特異的にFoxM1を発現増強するマウスを作成したところ、FoxM1の発現増強にて、肝障害が誘導された。また、肝内CCL2発現の上昇を認め、FoxM1が転写を直接促進していることを明らかにした。FoxM1の発現増強マウスでは肝内にマクロファージは増加しており、マクロファージを除去すると、肝障害は抑制された。また、肝細胞特異的なCCL2の発現抑制でも、FoxM1の発現増強マウスの肝障害、肝内マクロファージの増加は抑制された。非アルコール性脂肪性肝疾患ではFoxM1によるCCL2の上昇が、マクロファージを介して肝障害を誘導することが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

肝星細胞と肝癌細胞のクロストークの存在およびそのコミュニケーションツールとしての分泌タンパク候補を同定することができた。また、肝細胞とマクロファージのクロストークとそのコミュニケーションツールとしてCCL2を同定し、このクソルトークが肝疾患形成に与える影響を明らかにすることができた。引き続き、マクロファージと肝星細胞、マクロファージと肝癌細胞のクロストークも現在順調に研究は進行している。以上より、現在までの研究はおおむね順調に進展していると考える。

今後の研究の推進方策

肝星細胞と肝癌細胞のクロストークに関しては、ヒト臨床サンプルを用いて、今回同定した分子メカニズムがヒト肝癌でも機能しているのかを明らかにする。また、その臨床的な意義も併せて解析する。さらにマクロファージと肝星細胞、マクロファージと肝癌細胞のクロストーク、血管内皮細胞と肝星細胞、血管類洞細胞と肝癌細胞などのクロストークおよびそのコミュニケーションツールに関してもさらに研究を進めていく。これらの検討で明らかにした、細胞死機構の相互作用および細胞死機構を介した細胞間コミュニケーションが、ヒト肝疾患病態形成に関与しているかを、肝生検・切除肝試料を用いて検証する。また、「細胞死機構を介した細胞間相互作用」という視点から「肝疾患の病態進展」を総括し、細胞死機構の失調による肝疾患形成・病態進展機序を解明する。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 2件)

  • [雑誌論文] Forkhead Box M1 Transcription Factor Drives Liver Inflammation Linking to Hepatocarcinogenesis in Mice.2020

    • 著者名/発表者名
      Kurahashi T, Yoshida Y, Ogura S, Egawa M, Furuta K, Hikita H, Kodama T, Sakamori R, Kiso S, Kamada Y, Wang IC, Eguchi H, Morii E, Doki Y, Mori M, Kalinichenko VV, Tatsumi T, Takehara T.
    • 雑誌名

      Cell Mol Gastroenterol Hepatol.

      巻: 9 ページ: 425-446

    • DOI

      doi: 10.1016/j.jcmgh.2019.10.008.

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] DNase II activated by the mitochondrial apoptotic pathway regulates RIP1-dependent non-apoptotic hepatocyte death via the TLR9/IFN-β signaling pathway.2019

    • 著者名/発表者名
      Saito Y, Hikita H, Nozaki Y, Kai Y, Makino Y, Nakabori T, Tanaka S, Yamada R, Shigekawa M, Kodama T, Sakamori R, Tatsumi T, Takehara T.
    • 雑誌名

      Cell Death Differ.

      巻: 26 ページ: 470-486

    • DOI

      doi: 10.1038/s41418-018-0131-6.

    • 査読あり
  • [学会発表] HCC promotes autophagy in hepatic stellate cells, leading to HCC progression via IL-6/STAT3 signaling2019

    • 著者名/発表者名
      Yuta Myojin, Hayato Hikita ,Takahiro Kodama, Yuki Makino, Ryoko Yamada, Yoshinobu Saito, Tasuku Nakabori, Ryotaro Sakamori, Tomohide Tatsumi, Tetsuo Takehara
    • 学会等名
      The 54rd International Liver Congress of the European Association for the Study of the Liver
    • 国際学会
  • [学会発表] 慢性肝疾患におけるマクロファージ由来TNF-αは肝細胞における非アポトーシス型の肝細胞死誘導と酸化ストレス誘導により肝発癌を促進する2019

    • 著者名/発表者名
      齋藤 義修,疋田 隼人,工藤 慎之輔,野崎 泰俊,牧野 祐紀,中堀 輔,山田涼子,小玉 尚宏,阪森 亮太郎,巽 智秀,竹原 徹郎
    • 学会等名
      第55回日本肝臓学会総会
  • [学会発表] 持続的肝細胞アポトーシスは、酸化ストレス依存的にジエチルニトロサミンによるDNA損傷を持続させ腫瘍形成を促進させる2019

    • 著者名/発表者名
      野﨑泰俊、疋田隼人、田中聡司、水谷直揮、明神悠太、坂根貞嗣、 牧野祐紀、中堀輔、齋藤義修、小玉尚宏、阪森亮太郎、巽智秀、竹原徹郎
    • 学会等名
      第55回日本肝臓学会総会
  • [学会発表] 肝癌発育進展における肝星細胞オートファジーの意義2019

    • 著者名/発表者名
      明神悠太、疋田隼人、竹原徹郎
    • 学会等名
      第55回日本肝臓学会総会
  • [学会発表] 肝星細胞のオートファジーがNASH肝癌の発育進展に与える影響の検討2019

    • 著者名/発表者名
      明神悠太、疋田隼人、竹原徹郎
    • 学会等名
      第26回 肝細胞研究会
  • [学会発表] The autophagy in hepatic stellate cell promotes carcinogenesis and fibrosis in liver via IL6-STAT3 pathway2019

    • 著者名/発表者名
      Yuta Myojin, Hayato Hikita ,Takahiro Kodama, Yuki Makino, Ryoko Yamada, Tasuku Nakabori, Ryotaro Sakamori, Tomohide Tatsumi,Tetsuo Takehara
    • 学会等名
      The Liver Meeting 2019 (AASLD2019)
    • 国際学会
  • [学会発表] 転写因子FoxM1を標的とした新規NASH治療法の可能性について2019

    • 著者名/発表者名
      倉橋知英、吉田雄一、竹原徹郎
    • 学会等名
      第23回日本肝臓学会大会
  • [学会発表] 肝癌微小環境における肝星細胞の影響2019

    • 著者名/発表者名
      疋田隼人、明神悠太、牧野祐紀、小玉尚宏、竹原徹郎
    • 学会等名
      第33回肝類洞壁細胞研究会学術集会

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公開日: 2021-01-27  

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