研究課題
・LX-2細胞のオートファジーは、各種肝癌細胞株と共培養すると亢進した。FACSにて癌細胞とLX-2細胞を分離し肝癌細胞の細胞数を定量すると、肝癌細胞数は共培養により増加した。LX-2のAtg7を欠損すると、肝癌細胞に対する細胞増殖促進効果は抑制された。免疫不全マウスに肝癌細胞をLX-2と共移植すると、肝癌増殖は促進した。共移植するLX-2のAtg7を欠損すると、腫瘍増殖促進は抑制された。肝星細胞特異的Atg7欠損マウス、野生型マウスにストレプトゾトシンと高脂肪食による肝発癌を誘導した。20週齢の肝星細胞特異的Atg7欠損マウスでは野生型マウスに比して、背景肝のヒドロキシプロリン量、シリウスレッド陽性領域は減少した。腫瘍個数・最大腫瘍径は有意に小さく、腫瘍部のASMA陽性細胞は減少した。単培養時のLX-2細胞、肝癌細胞と共培養時のLX-2細胞、肝癌細胞と共培養時のAtg7 欠損 LX-2細胞の遺伝子発現をRNAシークエンスで網羅的に解析し、共培養により発現が上昇し、Atg7欠損により増加が軽減した分泌タンパクをいくつか同定した。・非アルコール性脂肪性肝疾患では、肝細胞のFoxM1の上昇を認めた。Dox誘導下で肝細胞特異的にFoxM1を発現増強するマウスを作成したところ、FoxM1の発現増強にて、肝障害が誘導された。また、肝内CCL2発現の上昇を認め、FoxM1が転写を直接促進していることを明らかにした。FoxM1の発現増強マウスでは肝内にマクロファージは増加しており、マクロファージを除去すると、肝障害は抑制された。また、肝細胞特異的なCCL2の発現抑制でも、FoxM1の発現増強マウスの肝障害、肝内マクロファージの増加は抑制された。非アルコール性脂肪性肝疾患ではFoxM1によるCCL2の上昇が、マクロファージを介して肝障害を誘導することが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
肝星細胞と肝癌細胞のクロストークの存在およびそのコミュニケーションツールとしての分泌タンパク候補を同定することができた。また、肝細胞とマクロファージのクロストークとそのコミュニケーションツールとしてCCL2を同定し、このクソルトークが肝疾患形成に与える影響を明らかにすることができた。引き続き、マクロファージと肝星細胞、マクロファージと肝癌細胞のクロストークも現在順調に研究は進行している。以上より、現在までの研究はおおむね順調に進展していると考える。
肝星細胞と肝癌細胞のクロストークに関しては、ヒト臨床サンプルを用いて、今回同定した分子メカニズムがヒト肝癌でも機能しているのかを明らかにする。また、その臨床的な意義も併せて解析する。さらにマクロファージと肝星細胞、マクロファージと肝癌細胞のクロストーク、血管内皮細胞と肝星細胞、血管類洞細胞と肝癌細胞などのクロストークおよびそのコミュニケーションツールに関してもさらに研究を進めていく。これらの検討で明らかにした、細胞死機構の相互作用および細胞死機構を介した細胞間コミュニケーションが、ヒト肝疾患病態形成に関与しているかを、肝生検・切除肝試料を用いて検証する。また、「細胞死機構を介した細胞間相互作用」という視点から「肝疾患の病態進展」を総括し、細胞死機構の失調による肝疾患形成・病態進展機序を解明する。
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doi: 10.1016/j.jcmgh.2019.10.008.
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