研究課題/領域番号 |
18H02796
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
青井 貴之 神戸大学, 科学技術イノベーション研究科, 教授 (00546997)
|
研究分担者 |
掛地 吉弘 神戸大学, 医学研究科, 教授 (80284488)
青井 三千代 (小柳) 神戸大学, 医学部附属病院, 特命助教 (90432327)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 大腸癌 / 癌幹細胞 / オルガノイド |
研究実績の概要 |
前年度までに、大腸癌症例の切除検体からのオルガノイド樹立およびその増幅、継代、凍結、融解再培養の方法を確立した。さらに、オルガノイドを用いて薬剤感受性を定量的に評価する系の構築した。これらを用いて、種々の臨床病理学的背景有する大腸癌症例約20例からのオルガノイドを樹立し、ストックを作製した。こうして得られたオルガノイドを用いて、薬剤感受性評価を実施した。現在、大腸癌術後化学療法として標準的に用いられている抗癌剤と、我々の先行研究から大腸癌幹細胞標的治療薬となる可能性が期待されるバルプロ酸、他のGSK3ベータ阻害薬、さらにはこれらの併用を行い、薬剤を投与しない陰性対照と比較した。この結果、抗癌剤に対する感受性は認められる症例と認められない症例があるという、術後化学療法の一般的成績と矛盾しないものであった。またバルプロ酸の有効性が統計的にも明らかになった。さらに、GSK3ベータ阻害剤も有効であったことから、バルプロ酸の作用機序の少なくとも一つは、我々が先行研究の結果から立てた仮説の通り、GSK3ベータ阻害によるものであることが示唆された。作用機序のさらなる解明を進めるため、オルガノイドにおけるGSK3ベータの下流標的候補分子の発現や局在の変化を評価する系を構築することに取り組み、成功した。 臨床検体への特定因子の導入による癌幹細胞樹立について、因子導入の系を確立し、実施した。因子の発現は得られたものの、先行研究において癌細胞株を用いた実験で得られたような癌幹細胞特性の獲得は見られず、臨床検体からの癌幹細胞樹立のためには他の因子が必要であると結論付けた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
バルプロ酸の有効性に関する非臨床POCを確立できたことの意義は大きい。 臨床検体からの癌幹細胞誘導については成功していないものの、一定の結論に至った。
|
今後の研究の推進方策 |
患者由来オルガノイドに対するバルプロ酸の効果について、その分子メカニズムの解明に注力してゆく。これまでに得られた結果から、GSK3ベータ阻害効果の関与が示唆されているが、そのさらなる下流の分子の動態を明らかにする。一方、バルプロ酸はHDAC阻害作用を有することが知られており、この作用による効果である可能性に対して、他のHDAC阻害剤を用いた実験を行うなどして検討する。 当初計画通り、他の分子についても、治療標的としての可能性検討を進めてゆく。
|