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2019 年度 実績報告書

肝線維化の素過程におけるマクロファージの意義および活性化調節機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 18H02801
研究機関国立研究開発法人国立国際医療研究センター

研究代表者

田中 稔  国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 細胞療法開発研究室長 (80321909)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード肝線維化 / マクロファージ / サイトカイン / 細胞間相互作用 / 肝星細胞
研究実績の概要

慢性肝障害を施した野生型マウスとOSM受容体KOマウスから回収した骨髄由来マクロファージ(BMDM)とクッパー細胞(KC)を用いて、次世代シークエンサーによるRNA-Seq解析を行なって得られた候補分子について解析を進めた。特にOSM依存的にBMDMで強く発現誘導される液性因子と膜タンパク質を有望な線維化実行候補分子と位置づけた。これらの候補分子には、単に炎症性の遺伝子だけでなく、サイトカインの活性修飾や、凝固・線溶系、コラーゲン分子の修飾や肝星細胞に直接作用しうる因子も含まれていた。そこで、複数の候補分子についてさらに解析を進めた。まず、チオアセタミドを用いたマウス慢性肝障害モデルで誘導した線維肝と障害前の正常肝における発現解析により比較を行ない、線維肝で有意に高値を示した候補分子のうち、まず、5つの分子について、Hydrodynamic Tail Vein injection (HTVi)法によるマウス肝臓での強制発現や、免疫組織化学的染色による線維肝内での発現部位の特定、肝星細胞培養系への添加による活性化評価などを行なった。HTViの結果では、少なくとも1つの液性因子について、肝内発現による線維化促進作用が認められた。また、免疫組織化学的染色を行なった結果、線維化部位に集簇するCD68陽性マクロファージの中に候補分子が発現していることが確認された。さらに、別の因子については、ヒト肝星細胞の細胞株であるLX2株を用いたin vitroアッセイに添加すると、その活性化を増強する作用が認められた。このように、複数の評価法により、肝線維化を誘導しうる新規の液性因子の実態が明らかとなりつつある。また、その他の候補分子についても、肝線維化の治療標的や診断マーカーとしての可能性を引き続き検証している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2019年度は当初計画した通り、線維肝の骨髄由来マクロファージでオンコスタチンM依存的に誘導される遺伝子群について、複数の肝線維化の評価法を用いて解析することができた。その結果、線維化誘導に強く関わると思われる因子を3つ同定することができた。Hydrodynamic Tail Vein injection (HTVi)法による肝臓での遺伝子発現は簡便ではあるが、その発現は中心静脈域に限られるという欠点があった。この点について、より広範囲な情報を得るためにアデノ随伴ウイルス(AAV8)による肝臓での遺伝子発現系を導入し対処することができた。このように、候補遺伝子の解析は順調に進んでおり、当初の目的となる線維化に関連しうる有望な遺伝子も複数見つかっていることから、計画は概ね順調に進展していると判断した。

今後の研究の推進方策

我々はこれまでにOSMが極めて強い肝線維化作用を示すことを明らかにし、その作用には骨髄由来マクロファージ(BMDM)への作用が必須であることを明らかにしてきた。そのため、本年度はOSM依存的に肝線維化を誘導する因子の同定を目指し、クッパー細胞(KC)では発現せず、野生型マウスのBMDMにおいて高い発現を示し、OSMR KOマウスのBMDMでは発現が低い分子に着目して研究を進めてきた。実際に、このような挙動を示す因子は複数存在し、肝内発現により線維化を誘導できる分子も見つかっていることから、これまでの方針は間違っていないと思われる。そこで、肝線維化モデルとして使用していたチオアセタミド以外のモデル(四塩化炭素頻回投与モデル、胆管炎モデル、非アルコール性脂肪性肝炎モデルなど)についても、線維化における候補分子の評価を行ない、治療標的としての意義を明らかにする。また、HTVi法では中心静脈域での発現誘導に限られるため、AAV8ベクターによる肝臓全体での発現誘導による線維化誘導の評価も取り入れる。特に有望な因子については、そのKOマウスを用いて慢性肝障害モデルを施し、肝線維化への影響を調べる。さらに、候補分子のヒト肝星細胞への直接または間接作用について調べるため、ヒト肝星細胞株に加え、ヒトiPS細胞より誘導した星細胞を用いた共培養系も利用し、活性化に与える影響を評価する。これらの結果を基に、候補分子の肝線維化の治療標的や診断マーカーとしての検証を強化する方針である。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2020 2019 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Tubular bile duct structure mimicking bile duct morphogenesis for prospective in vitro liver metabolite recovery.2020

    • 著者名/発表者名
      Rizki-Safitri A, Shinohara M, Tanaka M, Sakai Y.
    • 雑誌名

      J Biol Eng.

      巻: 14 ページ: 1-13

    • DOI

      10.1186/213036-020-0230-z.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Hepatic ferroptosis play an important role sa the trigger for initiating inflammation in nonalcoholic steatohepatitis.2019

    • 著者名/発表者名
      Tsurusaki S, Tsuchiya Y, Koumura T, Nakasone M, Sakamoto T, Matsuoka M, Imai H, Kok YC, Okochi H, Nakano H, Miyajima A, Tanaka M.
    • 雑誌名

      Cell Death & Disease

      巻: 10 ページ: 1-14

    • DOI

      10.1038/s41419-019-1678-y.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Hepatic ferroptosis plays an important role as the trigger for initiating inflammation in nonalcoholic steatoheptitits.2019

    • 著者名/発表者名
      Minoru Tanaka
    • 学会等名
      Cold Spring Harbor Asia, Liver Biology, Disease & Cancer
    • 国際学会
  • [学会発表] Hepatic ferroptosis plays an important role as the trigger for initiating inflammation in nonalcoholic steatoheptitits.2019

    • 著者名/発表者名
      Shinya Tsurusaki, Hiroyasu Nakano, Hitotaka Imai, Atsushi Miyajima, Minoru Tanaka
    • 学会等名
      Cold Spring Harbor Asia, Liver Biology, Disease & Cancer
    • 国際学会
  • [学会発表] フェロトーシスによる肝細胞死が非アルコール性脂肪性肝炎の初期炎症の起点として重要である2019

    • 著者名/発表者名
      鶴崎慎也, 土屋勇一, 今井浩孝, 大河内仁志, 中野裕康, 田中稔
    • 学会等名
      第92回 日本生化学会大会
  • [学会発表] フェロトーシスによる肝細胞死が非アルコール性脂肪性肝炎の初期炎症の起点として重要である2019

    • 著者名/発表者名
      鶴崎慎也, 土屋勇一, Cindy Yuet-Yin Kok, 大河内仁志, 中野裕康, 宮島篤, 田中稔
    • 学会等名
      第28回 日本Cell Death学会
  • [備考] 細胞組織再生医学研究部 肝臓の研究

    • URL

      https://ncgm-regenerative-medicine.org/research/r4.html

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公開日: 2021-01-27  

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