研究課題/領域番号 |
18H02805
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
室原 豊明 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (90299503)
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研究分担者 |
大内 乗有 名古屋大学, 医学系研究科, 寄附講座教授 (00595514)
坂東 泰子 (暮石泰子) 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (60452190)
柴田 玲 名古屋大学, 医学系研究科, 寄附講座教授 (70343689)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | グルカゴン / GLP-1 / 血管新生 / 糖尿病 / GLP-1受容体 / GLP-1受容体作動薬 / 心機能 / 心血管不全 |
研究実績の概要 |
糖尿病合併心血管病の基本病態は血管障害であり、それらは大血管障害と毛細血管障害に分けられる。毛細血管障害については、予後や患者のQOLに悪影響をもたらすものの、未だに明確な病態が明らかにされておらず治療法も確立されていない。本研究では糖尿病性細小血管傷害による心機能の低下対して、特にインクレチンやグルカゴンと、毛細血管機能、血管新生機能に着目してその病態解明と新しい治療法の開発を目指す。血管新生因子、アディポカイン・マイオカインとの関連性についても検討する。 (1)グルカゴン、GLP-1 研究 グルカゴン関連ペプチド (glucagon, GLP-1, GIPなど) は、心筋細胞や血管内皮細胞にも受容体が存在し、直接的効果がある。近年グルカゴン関連ペプチドにより、血管新生を惹起できることが報告されており、グルカゴン関連ペプチドと糖尿病性毛細血管障害の関連性が注目されている。大規模臨床試験でもGLP-1受容体作動薬が心血管イベントを有意に低下させることが示され、その機序について注目が集まっている。我々はグルカゴン・GLP-1欠損マウスを入手し研究を継続した。その結果興味ある知見を得たので、論文投稿中である。 (2)アディポカイン・マイオカイン研究 我々のグループはこれまでに新規アディポカイン・マイオカインを複数同定しており、これらが虚血部血管新生作用を有していることもまた報告した。2018年度には新規マイオカインの1つであるマイオネクチンを同定し、その生物学的特性に関して論文発表を行った(Otaka N. et al. Circ. Res. 2018;123:1326-1338.)。心筋虚血再灌流モデルマウスにおいて、マイオネクチンは心筋保護作用を示した。マイオネクチンは運動により骨格筋からの分泌が増強する。これらの研究を現在継続中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アディポカイン・マイオカイン研究においては、新規マイオカインの1つであるマイオネクチンを同定し、その生物学的特性に関して解析を行った(Otaka N. et al. Circ. Res. 2018;123:1326-1338.)。この延長として、心筋梗塞の一般的な動物モデルである、心筋虚血再灌流モデルマウスにおいて、マイオネクチンは心筋保護作用を示した。またマイオネクチンは運動により骨格筋からの分泌が増強することから、非常に興味深い分子である。これらのデータを現在投稿準備中である。 また、グルカゴン関連ペプチド (glucagon, GLP-1, GIPなど) に関連する研究では、我々はグルカゴン・GLP-1欠損マウスを入手する事が出来て、研究を継続している。糖尿病性心機能障害や毛細血管障害に対するグルカゴン関連ペプチドの役割について研究継続中である。現在は論文作成を終えて、海外雑誌に投稿中である。また学会でもデータを発表している(Nishimura et al. Glucagon acts as a guardian of the heart against catecholamine elevation. 2019年3月 日本循環器学会総会にて発表)。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、グルカゴン関連ペプチド(グルカゴンとGLP-1)欠損マウスを用い、心筋虚血モデル、TAC 心不全モデル、血管新生モデルなどを用いて、グルカゴンや GLP-1受容体作動薬剤の心血管系に与える役割を検討して行きたい。また、アディポカイン、マイオカインについても、引き続き動脈硬化モデル、血管新生モデル、心不全モデルなどの動物モデルを用いて、それらの効果を検討して行きたい。 2020年度から新たに当科において、肺高血圧症モデルマウスを作成する予定である。このモデルにおける血管新生と病態、さらにはグルカゴン関連ペプチド、アディポカイン、マイオカインの効果を見て行きたい。
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