研究課題/領域番号 |
18H02806
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
谷山 義明 大阪大学, 医学系研究科, 招へい教授 (60372611)
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研究分担者 |
石川 哲也 獨協医科大学, 医学部, 准教授 (80408369)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | エクソソーム / スプライシングバリアント / 心不全 / 腎不全 |
研究実績の概要 |
研究代表者は5種類の心不全モデルを作成し、心肥大期から心不全期にかけて共通して変化する遺伝子を網羅的に解析し、ペリオスチン遺伝子(PN)の特異的スプライシングバリアント(SV)(PN1)をクローニングした。PN1は心筋梗塞の梗塞巣周辺の筋線維芽細胞で主に分泌されていること、TGF-bやメカニカルストレスによって発現されることを報告した。 (Hypertens.2007)、心線維芽細胞への特異的PN1ノックインモデルでは心不全が誘導され、一方、ノックアウトモデルでは食塩感受性ダールラットの心不全が著明に抑制されることを報告している。(Circulation.2004)また、急性心筋梗塞モデルではPNに4つのSV(PN1-4)が出現するが、PN1-4の蛋白質は各々機能が異なっており、PN2抑制では血管新生が抑制されて心不全が悪化し、PN4抑制では過度な線維化抑制が誘導されて心破裂が生じるのに対して、PN1/3のみを抑制すると心筋細胞間の接着が強くなり心筋壊死を抑制することができ、心破裂を伴わずに心不全を治療できることを報告した。(Hypertens.2016)。これは、「特異的SV抑制が新たな心不全標的に成り得る」ことを示唆している。本研究の目的は、①PNのSVが制御されるメカニズムを解析すること、②心臓における肥満細胞を起点としたPNを介した慢性炎症ネットワークを解析すること、③心不全誘導因子である腎不全の慢性・急性モデルでの特異的PNSV抑制による病態改善効果のメカニズムを解析することである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、心不全の制御を行っているペリオスチン以外のスプライシングバリアントを同定するために、臨床での心不全での心筋生検や弁膜症の心不全の手術時の心臓検体を用いて網羅的に遺伝子解析を行った。実際、極めて多くのバリアントが生じていることを確認した。イントロンの残存している因子など多様な因子を確認し様々な解析を試みたものの、治療標的に考えられるほどの因子は同定できなかった。この一部を解析して心不全への影響を検討することは可能ではあったが新たな論文ができても臨床的意義疑わしくなると判断し中断した。 一方、癌細胞においてはペリオスチンの運搬にエクソソームが関与していることが報告されており、我々は電子顕微鏡を用いて心筋幹細胞から分泌されるエクソソーム外部にペリオスチンが付着しており心筋細胞増殖効果を確認しており、研究の方向性を転換した。さらに、慢性腎不全、急性腎不全に関しては順調に研究が進んだため国際学会で発表したが、論文の準備も進めている。また、拡張型心筋症の原因遺伝子を用いて作成したマウス心不全モデルを作成し、ペリオスチンノックアウトマウスと掛け合わせている。現在、心機能を解析中である。
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今後の研究の推進方策 |
我々は心筋幹細胞から分泌されるエクソソームがペリオスチンを含有しており、かつ外部に付着する形で存在することを確認し、心筋細胞増殖効果を確認している。この心筋幹細胞から分泌されるエクソソームが心不全治療効果を持つか検討する予定である。マウス急性心筋梗塞を作成して、心筋幹細胞由来のエクソソームとsiペリオスチンを導入した心筋幹細胞から分泌されるエクソソームをコントトールとして、静脈内に投与して、慢性期の心機能を評価する予定である。 一方、我々は東京医科歯科大学医学部にて集めた拡張型心筋症の遺伝子解析の結果から作成されたマウス心筋症モデルを入手し、ペリオスチンノックアウトマウスと掛け合わせている、このマウスは6か月以内に心房細動から心室細動が誘導されるためすべての個体が早期に死を迎える性質を持っている。現状では少なくともこの不整脈死がペリオスチンのノックアウトマウスとの交配で著明に抑制されることを確認しており、さらなる解析をおこなっている。 慢性腎不全、急性腎不全モデルでのペリオスチンノックアウトマウスとの交配では両モデルとも良好な腎保護作用を認めており、培養系の実験の追加を行い論文の準備を進めている。
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