研究課題
心不全の病態形成過程において慢性炎症が重要な役割を果たしていることが知られてきた。われわれは圧負荷後心不全モデルにおいて、ミトコンドリアDNAの分解不全とToll様受容体9を解する自然免疫経路が不全心炎症を惹起していることを報告した。本研究課題では、先行研究で試みられた個々の下流サイトカインへの介入ではなく、無菌的炎症反応の上流に介入する全く新たな心不全治療戦略を開発することを目的とする。心不全においてDNaseII発現制御に関わるmiRをmicroRNA(miR)ライブラリ(約3000種類)を用いて、網羅的にスクリーニングし、心不全と強く関連していると思われるある一つのmiRを同定した。さらに、このmiRおよびanti-miRがin vitroの実験においてストレス条件下で表現型に影響を持つことが明らかとなった。また、ヒト不全心の生検サンプルを用いたDNaseII発現量の評価を行い、その発現量に差がある可能性を見出した。なお、この研究に関連し、ミトコンドリアDNA-DNaseII-TLR9シグナルによる心筋炎症を薬剤によって抑制することにより、心不全の発症進展が抑制されることを明らかにし、報告した。また、HMGB1心筋細胞特異的欠損マウスの作成およびiPLA2beta心筋細胞特異的欠損マウスの作出に成功した。これらのマウスが正常に生まれ、非ストレス条件下では明らかな以上を認めないことを確認した。
2: おおむね順調に進展している
DNaseIIの発現制御にかかわるmicroRNAの同定が終了し、このmiRとanti-miRの機能解析をin vitroおよび病態モデルマウスを用いたin vivoで進めていく予定である。ヒト不全心の生検サンプルを用いたDNaseII発現量の評価が終了している。また、この研究に関連し、ミトコンドリアDNA-DNaseII-TLR9シグナルによる心筋炎症を薬剤によって抑制することにより、心不全の発症進展が抑制されることを明らかにし、報告した。また、HMGB1心筋細胞特異的欠損マウスの作成およびiPLA2beta心筋細胞特異的欠損マウスの作成が完了し、非ストレス条件下での解析が終了している。以上より、おおむね順調に進展していると判断される。
現在までの進捗状況の通り、DNaseIIの発現制御にかかわるmicroRNAの同定が終了しており、今後はこの同定したmiRおよびanti-miRの機能解析を病態モデルマウスを用いたin vivoにて行う。また、HMGB1心筋細胞特異的欠損マウスおよびiPLA2beta心筋細胞特異的欠損マウスの病態モデルを用いて、炎症と心不全との関連性についての解析を行い、内在性炎症に関わる分子経路の上流への介入が心不全治療標的となりうるのかを明らかにしていく予定である。
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J Am Coll Cardiol Basic Trans Science
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