研究課題
昨年度までに、ANGPTL2シグナルによる心筋エネルギー代謝制御機構として、心筋細胞におけるANGPTL2シグナル抑制が、呼吸鎖複合体IIを増加させること、ミトコンドリアの予備呼吸能を亢進させること、さらに活性酸素種を減少させることを明らかにした。また、心筋細胞におけるANGPTL2シグナル抑制は、呼吸鎖複合体IIのアセンブリーを促進している可能性が示唆された。呼吸鎖複合体IIの増加は、ミトコンドリアの予備呼吸能亢進、電子伝達系において産生される活性酸素種の減少や細胞死抑制につながることが報告されていることから、本年度においては、ミトコンドリア機能不全によるアポトーシス誘導メカニズムの一つであるmitochondrial permeability transition pore(mPTP)形成について検討を行った。コントロールおよび心筋特的Angptl2 KOマウスの心臓組織よりミトコンドリアを単離し、mPTP形成を評価したところ、両マウス間でmPTP形成に差は認められなかった。我々は、ANGPTL2シグナルによる心筋エネルギー代謝制御機構解明研究過程において、心筋細胞に豊富に発現する新規lncRNAであるCarenを同定し、Carenが心保護作用を有することを解明した。Carenによる心保護作用のメカニズムとして、ミトコンドリア生合成を促進による心筋エネルギー代謝増強、および心不全発症・進展に関わるDNA損傷応答活性化の抑制により、心不全病態の進行に拮抗することを解明した。さらに、心筋細胞におけるCaren発現量は、心不全の発症に繋がる加齢や高血圧などの圧負荷によるストレスによって低下することに加え、ヒト心不全患者の心臓組織においても著明に減少していることを明らかにした。また、マウス心不全モデルにおいて、心筋細胞のCaren RNA量を増加させることで心不全病態の進行を抑制することに成功した。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2021 2020 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 4件) 図書 (1件) 備考 (1件)
Nat Commun
巻: - ページ: in press
Oncogene
巻: 40 ページ: 55-67
10.1038/s41388-020-01505-7
Cancer Science
巻: 111 ページ: 1241-1253
10.1111/cas.14337
Atherosclerosis
巻: 315 ページ: 18-23
10.1016/j.atherosclerosis.2020.10.890
http://www.kumamoto-u-molgene.jp