研究課題/領域番号 |
18H02814
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
塩島 一朗 関西医科大学, 医学部, 教授 (90376377)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 心不全 / Wntシグナル |
研究実績の概要 |
Wntは分子量約4万の分泌蛋白で、細胞表面の受容体に結合するリガンドとして機能する。Wntによって惹起される細胞内シグナルのうち、β-カテニン非依存性経路をnon-canonical(非古典的)Wntシグナルと呼び、non-canonical Wntシグナルを活性化する主なリガンドとしてWnt5a、Wnt11が知られている。Wnt5a、Wnt11が心臓発生に必須であるとの報告はあるが、成人期の心臓におけるnon-canonical Wntシグナルの病態生理学的意義についてはほとんど明らかになっていない。そこで本研究ではWnt5aの心筋特異的ノックアウトマウスを用いて、non-canonical Wntシグナルが心疾患の発症進展に果たす役割とその分子機構を解明し、新たな心不全治療戦略を確立することを目的とした。 成人期の心臓における機能解析を行うために心筋特異的誘導型Wnt5aノックアウトマウスを作製したところ、通常の状態では明らかな表現型をみとめなかったが、左室に圧負荷を加えたところ、野生型マウスでみられた左室駆出率の低下が軽減され、心筋細胞由来のWnt5aが心不全を増悪させることが明らかになった。non-canonical Wntシグナルの指標としてphospho-JNK、phospho-CaMKIIをWestern blotを用いて定量評価したところ、野生型マウスと心筋特異的誘導型Wnt5aノックアウトマウスで顕著な差はみとめられなかった。また、JNK以外のMAPK経路としてERKやp38のリン酸化も評価したが、同様に野生型とノックアウトマウスで明らかな差はなかった。そこでノックアウトマウスと野生型マウスの心臓における遺伝子発現をRNA seqで網羅的に解析したところ、ノックアウトマウスではメカノ応答遺伝子の発現が低下していることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はRNAseqによるtranscriptome解析を行い、心肥大・心不全に関与するシグナル伝達経路の中でnon-canonical Wntシグナルの有無によって影響をうけるものを同定し、non-canonical Wntシグナルが心不全の進展を促進する分子メカニズムを明らかにすることを目標とした。RNA seqの結果、non-canonical Wntシグナルが細胞外力に対するメカノセンシング機構に関与している可能性が示され、今年度の目的は概ね達成できたものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までの結果で、non-canonical Wntシグナルが細胞外力に対するメカノセンシング機構に関与している可能性が示された。今年度はnon-canonical Wntシグナルがメカノセンシングを制御するメカニズムを明らかにすることを試みる。
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