研究課題
気管支喘息の病態形成には気道上皮細胞などの組織構築細胞とT細胞、樹状細胞(DCs)、自然リンパ球などの免疫細胞との相互作用が重要なことが示唆されているがその詳細は依然不明である。本研究者はこれまでに、主要アレルゲンであるHouse dust mite(HDM)の刺激を受けた気道上皮細胞がサイトカインを産生し免疫細胞の分化を誘導すること、一方、T細胞はIL-22等のサイトカインにより気道上皮細胞の機能を制御することを明らかにした。本研究では、アレルゲン刺激下の気道上皮細胞とDCsの相互作用の詳細を、トランスクリプトーム解析、エピゲノム解析による網羅的解析により解明することを目指した。HDM誘導性喘息モデルにおいて、HDMチャレンジ後経時的に気道上皮細胞とDCsを採取し、RNA-seq解析とChIP-seq解析を行ったところ、アレルギー性気道炎症により誘導されるスーパーエンハンサーとスーパーエンハンサー関連遺伝子が多数同定された。同定されたスーパーエンハンサー領域に対応するヒトゲノム領域には気管支喘息関連SNPsが多数集積した。一方、同領域に慢性腎不全やCOPD等、他疾患と関連するSNPsの集積は認めなかった。以上より、ヒト気管支喘息においても重要な領域/遺伝子が本解析により同定されたと考えられる。さらにネットワーク解析により、1) 他の細胞に先駆けて単球由来DCsにおいてトランスクリプトーム変化が誘導されること、2) 単球由来DCsはアレルギー性気道炎症の早期相(day7-9)では炎症誘導に関連する表現型を示すが、後期相では免疫反応の抑制とホメオスタシスの維持、創傷治癒に関連する表現型を示すことが明らかとなった。以上より、単球由来DCsは早期相での炎症のイニシエーターとしての役割と、後期相での炎症のターミネーターとしての役割の、相反する役割を担うことが示唆された。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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