研究課題/領域番号 |
18H02819
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
佐藤 光夫 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 教授 (70467281)
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研究分担者 |
長谷 哲成 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (30621635)
湯川 博 名古屋大学, 未来社会創造機構, 特任准教授 (30634646)
田中 一大 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (40809810)
川口 晃司 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院准教授 (10402611)
川井 久美 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 准教授 (50362231)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 変異KRAS |
研究実績の概要 |
【本課題の目的】肺癌のドライバー癌遺伝子の一つ変異KRASは腺癌の20%程度に認められるが、その標的治療の開発は未成功である。これは変異KRASの癌化シグナルの薬物的な遮断が困難なためである。応募者は正常気管支モデルであるHBEC実験系を確立し(Sato, Cancer Res 2006)、さらに、変異KRASをHBECに導入すると悪性度の増強にもかかわらず細胞分裂を停止する現象を発見した(Sato, Mol Cancer Res 2013)。これは正常細胞が癌化を防御する機構の一つ癌遺伝子誘導細胞老化(oncogene-induced senescence; OIS)である。以上より、応募者は変異KRAS肺癌の新たな治療として変異KRASシグナルの遮断ではなく、OISを活用する治療を着想した。その実現のために、まず、HBECを用いて、OIS抑制作用を表現型とする機能的なプールshRNAスクリーニングを実施し、複数の標的候補を特定した。特に、肺癌細胞株が高発現する遺伝子Xは小分子化合物による治療標的となる可能性があるため、学内創薬産学協同研究センター(ラクオリア創薬株式会社)化合物スクリーニングを予定した(機密保持契約締結済み)。本研究はこれらの研究を発展させ、変異KRASならびに変異EGFRやALK遺伝子によるOIS誘導治療の開発を目的とする。
【2019年度の成果】 これまでに、複数の化合物ライブラリーを使用したハイスループットスクリーニング(HTS)を実施した。初期に同定したヒット化合物の活性が再現できなかったため、化合物選択基準の見直しを行い、ヒット化合物を選び直した。ヒット化合物の再現性、選択性、構造活性相関(Structure-Activity Relationship: SAR)解析の結果に基づき、数個のシーズ化合物に絞り込んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでに、複数の化合物ライブラリーを使用したハイスループットスクリーニング(HTS)を実施した。初期に同定したヒット化合物の活性が再現できなかったため、化合物選択基準の見直しを行い、ヒット化合物を選び直した。ヒット化合物の再現性、選択性、構造活性相関(Structure-Activity Relationship: SAR)解析の結果に基づき、数個のシーズ化合物に絞り込んだ。ヒット化合物の再現性ができなかったことなどにより当初の計画よりやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果に基づいて2020年度は以下を計画する。①SARの結果に基づいて新規化合物(リード化合物)を合成する。②リード化合物および遺伝子X産物との結晶構造解析を外部委託に実施する。③新規化合物に対して評価・解析およびデザイン・合成のステップを繰り返し実施し、さらに薬効の優れるリード化合物を合成する。④前記と併行して、遺伝子Xノックアウト肺癌細胞クローンを用いて、遺伝子X阻害の癌細胞の増殖抑制機序の解明を継続して実施する。⑤2020年度までに合成されるリード化合物に対して、各種非臨床試験(薬理、毒性、薬物動態試験など)に必要な予備的試験を実施する。具体的には、複数の化合物の薬効(XenograftやPDXモデル)、薬物動態(経口吸収率、血中半減期、代謝・排出経路、代謝物)、短期毒性(心血管作用、中枢作用、病理)、物性(溶解性、固体安定性)を評価する。以上の結果に基づいて、2020年度末までにリード化合物の基本特許申請を目標とする。
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