研究課題
肺癌のドライバー癌遺伝子の一つ変異KRASは腺癌の20%程度に認められるが、その標的治療の開発は未成功である。これは変異KRASの癌化シグナルの薬物的な遮断が困難なためである。応募者は正常気管支モデルであるHBEC実験系を確立し(Sato, Cancer Res 2006)、さらに、変異KRASをHBECに導入すると悪性度の増強にもかかわらず細胞分裂を停止する現象を発見した(Sato, Mol Cancer Res 2013)。これは正常細胞が癌化を防御する機構の一つ癌遺伝子誘導細胞老化(oncogene-induced senescence; OIS)である。以上より、応募者は変異KRAS肺癌の新たな治療として変異KRASシグナルの遮断ではなく、OISを活用する治療を着想した。その実現のために、まず、HBECを用いて、OIS抑制作用を表現型とする機能的なプールshRNAスクリーニングを実施し、複数の標的候補を特定した。特に、肺癌細胞株が高発現する遺伝子Xは小分子化合物による治療標的となる可能性がある。学内創薬産学協同研究センター(ラクオリア創薬株式会社)との共同研究にて構造多様性指向および遺伝子機能に特化した2種類のコンパウンドライブラリー(それぞれ5万化合物を含み合計10万化合物)によるハイスループットスクリーニングを実施した。成果として、遺伝子Xの酵素活性を阻害する有望な化合物をシーズ候補として複数特定した。それらの候補化合物の抗腫瘍効果を肺癌細胞株を用いて評価したところ、複数の化合物が効果を示した。しかし、増殖抑制の程度を示す50%阻害濃度(Inhibitory concentration 50; IC50)はやや高値であったため、今後は、構造活性相関(Structure-Activity Relationship: SAR)解析に基づく化学修飾により値を下げることを目指す予定とした。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件)
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