研究課題
再生医学の現在の主流は、iPS細胞やES細胞などの幹細胞であるが(Ali NN, et al. Tissue Eng 2002) (Wang D, et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 2007)(Mou H, et al. Cell Stem Cell. 2012)、その幹細胞から目的の肺上皮細胞を誘導するには、プロセスは煩雑であり、腫瘍形成のリスクもある。これまでiPS細胞関連技術の進歩によりその課題は克服されつつあるが、なお自身のiPS細胞から再生を目的とした細胞製剤を使用するにはコストや時間の点で課題がある。直接リプログラミングは、iPS細胞やES細胞などの幹細胞を経ることなく、線維芽細胞などの体細胞から他種の細胞へ直接誘導する方法である。神経細胞、心筋細胞、肝細胞等ではすでに成功が報告されているが、肺上皮細胞への直接リプログラミングはこれまで報告がなかった。研究代表者らは、候補因子としてあらかじめ14因子を選定し、因子導入後のSP-C遺伝子やSP-C蛋白の発現を検討することで、最終的にはマウス線維芽細胞に特異的3ないし4因子を導入することで肺上皮様細胞への直接リプログラミングを試み、II型上皮細胞のマーカーであるSP-C遺伝子、及びタンパクの発現を認める細胞を誘導した。この誘導細胞は、II型肺胞上皮細胞に特徴的なlamellar体を有していた。以上の有望なマウスの研究結果を踏まえ、本研究ではヒト線維芽細胞から肺上皮細胞への直接リプログラミングによる効率的な誘導方法を確立することを目的とした。本年度までに、ヒトのリプログラミング因子の同定しヒト線維芽細胞からヒト肺上皮細胞を誘導することを目的として、まず候補因子を16因子を選定し、レンチウイルスシステムを用いて、ヒト肺臨床検体から採取した肺線維芽細胞を用いて検討を行い、リプログラミング因子として5因子を候補因子として抽出した。次年度は、候補因子をさらに最適化するため、5因子で誘導した細胞のRNA-seq解析を行い、最適な条件をさらに特定していく。
2: おおむね順調に進展している
ヒト遺伝子のレンチウイルスベクター作成を完了し、予備検討で最も効率的と考えられたヒト臨床肺検体から培養した肺線維芽細胞を用いて、検討を行い、予定通り5因子に絞り込めているため。
次年度は、5因子で誘導した細胞のRNA-seqを施行し、過不足の因子を同定して、最適化を、リプログラミング因子の最適化、誘導効率の最適化を目指していく。
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