研究課題
ミトコンドリアは生体の細胞内エネルギー産生の90%以上を担い、その機能異常はミトコンドリア由来酸化ストレス(mitROS)の増加とATPの減少により様々な病態を引き起こす。またミトコンドリア障害が糖尿病性腎症、急性腎障害、慢性腎不全、ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群の原因となること報告されている。その治療には抗酸化剤が用いられるがミトコンドリアの機能を根本的に改善する治療法はなかった。我々は植物ホルモンであるインドール酢酸をリード化合物としたインドール化合物Mitochonic acid 5:MA-5にATPを増加させる作用があることを見いだした。ミトコンドリア病患者由来線維芽細胞ではグルタチオン(GSH)合成阻害剤投与によるGSH枯渇でmitROSが増加し酸化ストレスによる細胞死が誘導されるが、MA-5投与は細胞生存率が濃度依存性に上昇と細胞内ATP量の増加をもたらしmito-ROS産生は減少させた。MA-5の結合蛋白質を探索したとこるcrista junctionsに存在するMINOS構成蛋白質であるMitofilin/Mic60を同定した。MA-5は遺伝的背景の異なる様々なミトコンドリア病患者由来皮膚線維芽細胞25名中24名の細胞酸化ストレス下における細胞死亡率を改善させた。次にミトコンドリア病モデルマウスMitomiceにMA-5を投与すると生存率が改善し心臓と腎臓のミトコンドリア呼吸活性が上昇し、腎虚血再灌流傷害やシスプラチン腎症害モデルにMA-5を投与すると腎機能と組織障害の改善を認めた。
2: おおむね順調に進展している
動物モデルでの確認ができている。患者由来皮膚線維芽細胞の殆どでその効果が確認された。
申請書の予定とおり研究を継続してMA-5はミトコンドリア蛋白質に直接結合しミトコンドリア機能異常下にATP量を上昇させて細胞生存率を上昇させる新たなタイプのミトコンドリア病および関連疾患の治療薬となる可能性を引き続き探索する
すべて 2018 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 5件)
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