研究課題/領域番号 |
18H02827
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
松阪 泰二 東海大学, 医学部, 教授 (50317749)
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研究分担者 |
荒岡 利和 京都大学, iPS細胞研究所, 特定研究員 (40437661)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | オルガノイド / ポドサイト / 腎臓病 / ネフローゼ症候群 / ネフロン前駆細胞 |
研究実績の概要 |
イムノトキシンLMB2の静注によりポドサイト特異的傷害の誘発が可能なNEP25マウスの胎児腎臓を採取し、CDP法を行って、NPC細胞株を樹立した。このNPCを培養し、分化を誘導してオルガノイドを作成した。20 nMのLMB2を添加すると、ポドサイト特異的タンパク質であるpodocalyxinの発現の消失を確認し、オルガノイドにおいてもLMB2によるポドサイト特異的傷害誘導が可能である事が示された。 ポドサイト特異的にHAタグ付加リボゾーム蛋白Rpl22を発現するRibotag/Nephin-Creマウスの胎児腎を採取し、CDP法を行って、NPC細胞株を樹立した。このNPCを培養し、分化を誘導してオルガノイドを作成した。このオルガノイドにおいて、nephrinを発現するポドサイトに、HAが発現していた。オルガノイドのホモゲネートから、抗HA抗体による免疫沈降によりRNAを採取し、ポドサイト特異的mRNAが濃縮されている事を確認した。すなわち、腎オルガノイドからポドサイトRNAの単離方法が確立された。 NPCの効率的遺伝子改変方法の確立をめざして、lipofection法を試みたが、NPCの細胞特性が変化してしまった。Electroporation法を試みたが、導入細胞の薬剤選択が有効になされなかった。CRISPR-Cas9系を用いた遺伝子改変法の開発を目的に、Cas9 knock-inマウスを導入した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NPCの培養、分化誘導、オルガノイドの形質解析を安定してできるようになり、またCDP法によりNEP25マウスのNPCと、Ribotag/Nephrin-CreマウスのNPCの樹立に成功した。さらに、LMB2によるポドサイト傷害の誘導が可能であり、またポドサイト特異的RNAの採取も可能である事を示せた。これらは、本計画の本幹技術で、様々な苦難はあったものの、まずは順調に達成された。簡便な遺伝子導入方法の開発は、試みたものの現在のところ成功していない。
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今後の研究の推進方策 |
NEP25/Ribotagマウス由来腎オルガノイドにイムノトキシンLMB2を作用させて、ポドサイト傷害を誘発し、傷害前後のポドサイトRNAを採取する。in vivoのNEP25マウスのポドサイトで傷害後に変動を示した遺伝子に関して、オルガノイドポドサイトでも同様の変動が認められるか定量RT-PCR法で調べる。同様の実験をpuromycinで傷害する事により行い、変動するRNA変化が普遍的かどうか検証する。 NEP25由来NPCとRibotag 由来NPCを混合させて、キメラオルガノイドを作成する。これにLMB2を作用させて、NEP25 NPC由来ポドサイトを傷害する。HA抗体による免疫沈降により、Ribotag NPC由来ポドサイト(hCD25非発現)のRNAを採取する。in vivoでは、hCD25発現・非発現ポドサイトが混在するモザイクマウスでは、hCD25非発現ポドサイトも二次的傷害をうけたが、キメラオルガノイドで同様の現象が認められるかどうか検証する。 tdTCas9 knock-inマウスをSix2-Creマウスと交配し、胎児腎からCDP法でCas9発現NPCを樹立する。このNPCは、gRNAのみの導入により、容易に遺伝子改変が可能であると期待される。このNPCを用いて、遺伝子改変オルガノイドを作成する事をめざす。
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