研究課題/領域番号 |
18H02828
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
柏原 直樹 川崎医科大学, 医学部, 教授 (10233701)
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研究分担者 |
佐藤 稔 川崎医科大学, 医学部, 准教授 (70449891)
長洲 一 川崎医科大学, 医学部, 講師 (40412176)
城所 研吾 川崎医科大学, 医学部, 講師 (50435020)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 内皮障害 / 酸化ストレス / 内皮/上皮連関 / インフラマソーム / 慢性炎症 / 線維化 |
研究実績の概要 |
内皮障害はいかなる機序で内皮/上皮連関を破綻させ、腎障害進展の2大病態である「炎症」と「線維化」を惹起させ、CKDを重症化させるのか、この解明に取り組んできた。これまで内皮障害がCKDの基盤病態を形成することを明らかにしてきた。しかしながら、内皮障害がいかにして、腎組織に炎症と線維化を引き起こすのかは不明であった。 内皮障害が起点となり、ROS/NO変化がメディエーターとして働き、炎症、線維化が惹起される過程を、慢性炎症の中心機序であるNLRP3-inlammasome経路、線維化に深く関係するWnt/β-catenin経路活性化に注目して解析した。2)糖尿病性腎症、CKDにおける糸球体障害(ポドサイト障害)、尿細管間質障害の両者に内皮/上皮病態連関が関係することを明らかにした。3) 内皮障害が上皮細胞にInflammasome活性化を惹起することを示した。詳細な分子機序の解明に取り組んでいる、4)糖尿病、ネフローゼモデルにおけるInflammasome活性化動態のin vivoで解析中である。開発してきたin vivo imaging技術で、糸球体上皮のInflammasome活性化の動態を解析中である。 5) 内皮/上皮病態連関、内皮細胞障害による上皮のInflammasome活性化動態を解析している。内皮特異的NADPH oxidase(tie2-NOX2 TG)マウスに糖尿病モデルを作成し、内皮に酸化ストレスを負荷したところ、アルブミン尿出現前の早期から、内皮障害だけでなくポドサイトの形態変化(内皮/上皮連関)を認めた。6)尿細管間質病変における内皮障害、内皮/上皮連関の役割の解析にも取り組んでいる。eNOS KO-UUOにおいて間質炎症・線維化が増悪することを見いだしている。正常内皮機能はWnt/β-catenin経路を抑制的に制御しており、内皮障害によるNO不足により線維化が進行することが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)内皮/上皮病態連関、内皮細胞障害による上皮のInflammasome活性化動態の解析:内皮特異的NADPH oxidase(tie2-NOX2 TG)マウスに糖尿病モデルを作成し、アルブミン尿出現前の早期から、内皮障害だけでなく、ポドサイトの形態変化(内皮/上皮連関)を認めた。ポドサイトにおけるInflammasome活性化のメカニズムを解析している。 2)尿細管間質病変における内皮障害、内皮/上皮連関の役割の解析:UUOモデルを作成し、Inflammasome活性化動態を解析した。eNOS KO-UUOにおいて間質炎症・線維化が増悪することを見いだした。PKGがGSK3βと同様にβ-cateninをリン酸化する。正常内皮機能はWnt/β-catenin経路を抑制的に制御しており、内皮障害によるNO不足により線維化が進行すると想定している。sGC刺激薬(BAY 63-2521)をeNOS-KO/UUOに投与し、線維化改善作用検討し、一定の結果を得ている。 3)急性腎障害(AKI)からCKDへの移行要因としての内皮障害の役割の解明:eNOS-KOマウスに虚血再灌流モデル(IRI)を作成し組織障害を比較解析した。eNOS欠損により、炎症が遷延し、線維化を生じることが判明した(AKI-CKD移行)。Inflammasome関連遺伝子発現、Wnt/β-Catenin経路遺伝子発現を検討している。 4)Keap-1/Nrf-2経路活性化による腎保護機序の解析:Nrf2-KOあるいはKeap1-KDマウスに糖尿病モデルを作成し、病態変化を評価している。CDDO-metyl (Bardoxolone methyl、RTA402) はこのNrf2を活性化する薬剤である。RTA402を糖尿病モデル及びICGNマウスに投与し、尿細管ミトコンドリア障害軽減作用・腎保護効果を検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
内皮障害はどの様な機序を介して、内皮/上皮連関を破綻させ、炎症と線維化を引き起こし、腎障害を進展させるのか、内皮障害と上皮障害を結ぶ機序は何か、内皮機能の保持によって腎障害進展抑制は可能か、を明らかにすることが本研究の目標である。内皮障害はいかなる機序で内皮/上皮連関を破綻させ、腎障害進展の2大病態である「炎症」と「線維化」を惹起させ、CKDを重症化させるのかを解明したい。これまで内皮障害がCKDの基盤病態を形成することを明らかにしてきた。しかしながら、内皮障害がいかにして、腎組織に炎症と線維化を引き起こすのかは不明であった。先端技術も取り入れ、In vivoで経時的に内皮機能変化、血流変化、炎症を評価できる技術を開発しており活用したい。 1)内皮障害が起点となり、炎症と線維化が惹起される過程を、NLRP3-inlammasome経路(慢性炎症の中心機序)、Wnt/β-catenin経路(線維化に深く関係)に注目して解析する。2)糸球体病変・尿細管間質障害の両者に内皮/上皮病態連関が関係することを明らかにする。3)急性腎障害(AKI)からCKDへの移行要因としての内皮障害の役割を解明する。4)CKD、加齢腎の基盤病態としての血管内皮障害の分子機序を明らかにする。5)内皮障害、内皮/上皮病態連関の改善を目標とした治療戦略を考案する。抗酸化遺伝子群を包括的に統御するKeap-1/Nrf-2経路活性化による腎保護効果とそのメカニズムを明らかにする。内皮と上皮細胞は近接して存在しており、相互に機能連関(内皮/上皮連関)が存在する。糸球体・尿細管共に、上皮細胞がVEGF等を産生し、糸球体内皮、傍尿細管毛細血管内皮の維持に必須の役割を果たしている。内皮障害がどのような機序を介して、腎障害を惹起するのか、内皮/上皮病態連関の存在とその詳細を本研究で解明し、治療法開発に繋げたい。
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