研究課題/領域番号 |
18H02830
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
松江 弘之 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (10250424)
|
研究分担者 |
松岡 悠美 千葉大学, 大学院医学研究院, 講師 (10402067)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | マクロファージ / マスト細胞 |
研究実績の概要 |
定常状態におけるマスト細胞の組織常在マクロファージ前駆細胞(TRMP細胞)誘導と組織マクロファージの分化に及ぼす影響の研究に関しては概ね計画通りに進んでいる。マスト細胞欠損マウスの腹腔内に、マスト細胞再構成後に出現するTRMP細胞がどのように分化するのか、TRMP細胞に分化する可能性をもつ細胞集団の性質を解明した。 ①TRMP細胞の細胞生物学的解析では、①-1 FACSを用いた表面マーカーによるフェノタイプ解析、①-2 ギムザ染色後の光学顕微鏡観察による形態レベルの解析、①-3 各種幹細胞・前駆細胞と比較した遺伝子発現による系統タイピング(PCA)、①-4 分離TRMP細胞のin vitro培養、①-5 in vitro再構成の検討のいずれにおいてもほぼ予定通り終了した。この細胞がマスト細胞により厳密に制御され、 腹腔内マクロファージの分化に重要であることを示し、TRAMP細胞の分化の状態明らかにした。次年度腹腔内における再現性の確認とさらなる解析を進めるとともに、皮膚においても同様の所見が得られるかどうか解析を行う。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①-1から①ー5まで、概ね順調に進展している。①-1フェノタイプ解析においては、骨髄幹細胞(HSC)や多機能前駆細胞(MPP)の表面マーカーであるCD34、Sca-1、CD135に加え、マスト細胞前駆細胞に特異的に発現するintegrin 7などのマーカーを用いてさらなる解析を進めている。①-2 形態レベルの解析では、電子顕微鏡を用いた微細構造の解析を検討中であり、①-3遺伝子発現による系統タイピングでは、現在までmφ前駆細胞であるMDP(macrophage-dendritic cell progenitor)やcMoP(common monocyte progenitor)との比較に加え、さらに上流のHSC(hematopoietic stem cell)、顆粒球系のMPP(multipotent progenitor)であるMPP3、MPP4や、mφ前駆細胞でMDPより上流のGMP(granulo-monocyte progenitor)を用いて、TRMPが前駆細胞としてどこに位置付けられるかをRNA-seqを用いた解析を進めている。①-4 分離TRMP細胞のin vitro培養では、培養環境に依存したマスト細胞様細胞あるいはmφ様細胞への分化を示したが、分化後の各細胞としての機能的な評価を行うためその手法を模索している。①-5 in vitro再構成についてはマスト細胞とTRMPの共培養を検討している。また、次年度以降再現性を検討する。①-6分化の作用機序の解明において、TRMP細胞のRNA-seqの結果(①-3)に基づいて分化に関与すると考えられる転写因子を含めたデータ解析を計画している。また、②の皮膚における解析では、既にマスト細胞欠損マウスの皮膚におけるマスト細胞再構成の結果が安定して得られているため、皮膚におけるTRMPの解析を計画している。
|
今後の研究の推進方策 |
研究計画は、ほぼ提案通り進捗している。今までの結果の再現性を確認するとともに、①-1フェノタイプ解析においては、TRMPの表面マーカーとして、さらにintegrin 7などのマスト細胞前駆細胞に特異的に発現するマーカーを用いてさらなる解析を予定している。①-2 形態レベルの解析では、セルソーティングによりマスト細胞、mφ、TRMPを電子顕微鏡を用いて微細構造を解析し、どのような特徴的な構造があるかを解析する。①-3遺伝子発現による系統タイピングにおいては、HSC、MPP、GMP、MDP、cMoP、マスト細胞、mφをコントロールとし、TRMPを含めてRNA-seqにて網羅的に解析を行う。解析方法としては主成分解析(PCA)に加え、幹細胞あるいは前駆細胞の遺伝子セットを用いたGSEA、階層的ヒエラルキー解析などを用いてTRMPが前駆細胞かどうか、前駆細胞としての位置付けにについて解析を行う。①-4 分離TRMP細胞のin vitro培養では、機能的な評価を行うために、肥満細胞機能としての増殖能、またはmφ機能としての貪食能の有無についてTRMPと分化後の各細胞について解析を行う。①-5 in vitro再構成についてはマスト細胞とTRMPの共培養を行う。①-6分化の作用機序の解明では、候補遺伝子を抽出する。②皮膚におけるTRMPの解析については、Cpa3Cre/+マウスを用いてマスト細胞再構成により腹腔と同様にTRMPが検出されるかをFACSにて解析を行う。さらに樹状細胞サブセットについてもマスト細胞の有無によって影響があるかどうか免疫染色を用いて解析を行う。また、ここまでの結果が得られ、TRMP自体の解析が完了した段階で、疾患モデルマウスを用いた解析を推進する予定である。
|