最近、マクロファージ研究は急速に発展し、もはや貪食細胞としての機能のみではなく、炎症・アレルギー反応、腫瘍、組織修復、生活習慣病など多くの疾患の病態に関与している。さらに、発生・分化・多機能性の詳細も明らかになりつつあり、これらの研究成果を包括的に捉えることで、マクロファージの分化自体が治療ターゲットになる可能性がある。一方、マスト細胞も、アレルギー炎症のエフェクター細胞としてだけでなく、組織の様々な反応に関与している。我々は、最近、組織に常在するマクロファージ前駆細胞(TRMP細胞と命名)を発見し、この細胞が組織マスト細胞により厳密に制御され、組織マクロファージの分化に重要であることを見出した。すなわち、マウス腹腔内と皮膚における常在マスト細胞がTRMP細胞を介して組織マクロファージの分化に関与することを2系統のマスト細胞欠損マウスとそのマスト細胞再構成実験を用いることで、in vivoで証明した。さらに、in vitroにおいて、腹腔内TRMP細胞を分離培養し、培養条件によって、マスト細胞様細胞とマクロファージ様細胞に分化しうることを示した。これは、組織マスト細胞の新たな機能であり、腹腔や皮膚における組織マスト細胞が、TRMP細胞の分化を介して組織マクロファージの数を制御していることを証明した。これらのマスト細胞とマクロファージの組織における関係は、冒頭に述べたこれらの細胞が関与する様々な疾患の病態にかかわっている可能性があり、新しい病態制御の分野を開拓する基盤になる研究であり意義があると考えられる。(再現性を十分に確認し、現時点で論文の再投稿準備中である。)
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