研究課題
本研究では、急性リンパ性白血病の新たな反復性遺伝子変異であるMEF2D融合遺伝子、ZNF384融合遺伝子の白血病化の機序を分子レベルで明らかにすることを目的に研究を行なっている。今年度はZNF384融合遺伝子を中心に解析し、以下のことを明らかにした。54例のB細胞性ALLの遺伝子発現プロファイルを解析し、ZNF384融合遺伝子陽性ALLで特異的に高発現しており、B細胞分化抑制に働くと予想される遺伝子を探索し、SALL4, ID2をZNF384融合蛋白の特異的転写標的候補として選別した。ALL細胞株にZNF384融合蛋白発現ベクターを導入すると野生型を導入した時よりも強くこれら遺伝子のmRNA発現が誘導された。SALL4, ID2のエンハンサー領域を用いたルシフェラーゼアッセイでZNF384融合蛋白は野生型より強い転写活性を示した。In vitroの結合実験でZNF384融合蛋白は野生型に比べて転写活性化補助因子p300との結合親和性が上昇していた。ZNF384融合蛋白の転写活性はp300を共発現することで増強し、その増強の程度は野生型ZNF384でみられるものより強かった。これらのことより、ZNF384融合蛋白はp300との結合親和性が高いことにより転写活性が異常に上昇し、SALL4, ID2などのB細胞分化抑制に働く遺伝子の発現を上昇させることでALL発症に寄与するというモデルを提唱し、一連の結果をFEBS letter誌に報告した。
1: 当初の計画以上に進展している
ZNF384融合遺伝子に関する研究は次年度研究論文投稿の予定であったが、計画の進捗が早く、また雑誌投稿後のアクセプトも早く、すでに論文発表を終えることができた。
次年度はMEF2D融合遺伝子に関しては融合蛋白が高発現することが白血病化に重要であることを発見したことを踏まえ、この蛋白の減少を誘導する薬剤の白血病治療薬としての可能性を検討する。ZNF384融合遺伝子に関してはEP300, SYNRG以外の融合パートナーとの融合遺伝子に関しても検討を行う。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
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