ヒト正常造血幹細胞のアッセイ系として開発された免疫不全マウスによる異種移植の系は、ヒト造血・免疫系の動態や制御プロセスをin vivoで評価するモデルとして頻用されている。さらに、この系はヒト疾患再現モデルとして、造血器腫瘍・固形腫瘍の幹細胞純化や病態解明、幹細胞標的治療の開発、あるいはマウス内へのヒト細胞への感染実験モデル・ワクチン開発、薬剤安全性の前臨床試験への応用が期待されている。しかし、現在の異種移植系では、マウス内のヒト造血がB細胞系に偏る、赤芽球系・巨核球系の造血がみられない、急性白血病以外の腫瘍細胞の生着効率が低い、などの問題点が挙げられる。本研究では、「完全マクロファージ寛容」「骨髄ニッチのオープン化」導入により、マウス環境を改変した次世代患者組織移植モデルを開発し、あらゆる疾患を再現可能な全般的疾患再現モデル構築によって、腫瘍性幹細胞純化・創薬開発の支援基盤を目的としている。 我々は、すでに、B6バックグラウンドで、Rag2欠損、IL2Rg欠損に、骨髄ニッチオープン化のためのKit変異を導入したB6.Rag2(null)IL2Rg(null)Kit(Wv/Wv)マウスを樹立し、「骨髄ニッチのオープン化」に成功し、Stem Cell Reports誌(2016年)に報告したが、さらに、BRGSにヒトSIRPAをノックインしたBRGhSラインも樹立し、「完全マクロファージ寛容」導入も完了し、BRGhSラインの移植レシピエントしての有用性を詳細に解析し、Blood誌(印刷中)に報告した。さらに、BRGSKとBRGhSを交配し、次世代PDXモデルの完成形であるBRGhSKの樹立を完了し、本研究課題のマウスモデルの樹立に成功した。
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