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2019 年度 実績報告書

上皮バリア機能の破壊に伴う炎症の誘導に関わるサイトカインの機能解析

研究課題

研究課題/領域番号 18H02847
研究機関東京大学

研究代表者

中江 進  東京大学, 医科学研究所, 特任研究員 (60450409)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワードアレルギー / 喘息 / IL-33
研究実績の概要

マウスにプロテアーゼ(papain)を吸入させると、プロテアーゼが気道上皮細胞を破壊し、それに伴い、IL-33が細胞外に放出される。このIL-33が2型自然リンパ球(ILC2)や好塩基球からの2型サイトカインの産生を誘導し、好酸球の浸潤を伴う炎症を誘導する。このIL-33依存的な気道炎症時に発現が増強するサイトカイン遺伝子として、IL-25、TSLPに加え、新しくIL-17B、IL-31、IL-36を同定した。そこで、プロテアーゼの吸入による気道炎症におけるこれらサイトカインの関わりを明らかにするために、IL-17B遺伝子欠損マウス、IL-31遺伝子欠損マウス、IL-36α欠損マウスを作成し、これら遺伝子欠損マウスにプロテアーゼを吸入させた。その結果、プロテアーゼの吸入による気道炎症は、野生型マウスと比較して、これら遺伝子欠損マウス全てで抑制された。したがって、IL-17B、IL-31、IL-36αがIL-33依存的な気道炎症に関与していることが明確になった。今後は、IL-17B、IL-31、IL-36αがどのような細胞から産生され、どのような細胞に作用するのか、詳細を明らかにしていく。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

IL-25とIL-17Bは同一の受容体に結合し、IL-17BはIL-25の作用を阻害するアンタゴニストとして働くことが報告されている。プロテアーゼの吸入による気道炎症は、野生型マウスと比較して、IL-25遺伝子欠損マウスでは抑制された。IL-17BがIL-25の作用を阻害するアンタゴニストであるならば、IL-17B遺伝子欠損マウスではこの気道炎症は増悪すると期待される。しかしながら、予想に反して気道炎症は、IL-17B遺伝子欠損マウスにおいてもIL-25遺伝子欠損マウスと同程度、抑制された。したがって、IL-17Bにはアンタゴニストではなく、IL-25と同様にアゴニストとして炎症を誘導する働きがあることがわかった。その際、炎症局所において、IL-25はマクロファージと好中球、IL-17Bはマクロファージで発現しており、また、それら受容体は樹状細胞で発現していることが明らかになった。
IL-36には異なる遺伝子からなる3つのアゴニスト(IL-36α、IL-36β、IL-36γ)と一つのアンタゴニスト(IL-36RN)の4つの分子が共通の受容体に結合する。プロテアーゼの吸入による気道炎症は、野生型マウスと比較して、IL-36α遺伝子欠損マウスでは抑制された。その際、炎症局所において、IL-36αは上皮細胞で発現していることが明らかになった。
IL-31は主にTh2細胞から産生されるIL-6ファミリーサイトカインである。プロテアーゼの吸入による気道炎症は、IL-31遺伝子欠損マウスでも抑制されることが明らかになった。このプロテアーゼによる気道炎症はT細胞のないマウスでも誘導されるため、T細胞以外のIL-31産生細胞の関与が示唆された。炎症局所では、IL-31は上皮細胞で発現していることが明らかになった。

今後の研究の推進方策

IL-25、IL-17B、IL-36、IL-31の発現はmRNAレベルで明らかになったが、タンパク質レベルでの同定を行う。それらの受容体発現細胞に対し、リコンビナントタンパク質で刺激を行い、個々のサイトカインが受容体発現細胞に対しどのような生理活性を誘導するのか、遺伝子発現プロファイルの網羅的解析や機能解析を行う。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2019

すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Induction of human regulatory innate lymphoid cells from group 2 innate lymphoid cells by retinoic acid2019

    • 著者名/発表者名
      Morita H, Kubo T, Ruckert B, Ravindran A, Soyka MB, Rinaldi AO, Sugita K, Wawrzyniak M, Wawrzyniak P, Motomura K, Tamari M, Orimo K, Okada N, Arae K, Saito K, Altunbulakli C, Castro-Giner F, Tan G, Neumann A, Sudo K, O'Mahony L, Honda K, Nakae S, Saito H, Mjusberg J, Nilsson G, Matsumoto K, Akdis M, Akdis CA
    • 雑誌名

      Journal of Allergy and Clinical Immunology

      巻: 143 ページ: 2190~2201.e9

    • DOI

      10.1016/j.jaci.2018.12.1018

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Homeostatic Control of Sebaceous Glands by Innate Lymphoid Cells Regulates Commensal Bacteria Equilibrium2019

    • 著者名/発表者名
      Kobayashi Tetsuro、Voisin Benjamin、Kim Do Young、Kennedy Elizabeth A.、Jo Jay-Hyun、Shih Han-Yu、Truong Amanda、Doebel Thomas、Sakamoto Keiko、Cui Chang-Yi、Schlessinger David、Moro Kazuyo、Nakae Susumu、Horiuchi Keisuke、Zhu Jinfang、Leonard Warren J.、Kong Heidi H.、Nagao Keisuke
    • 雑誌名

      Cell

      巻: 176 ページ: 982~997.e16

    • DOI

      10.1016/j.cell.2018.12.031

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Cyclooxygenase inhibition in mice heightens adaptive‐ and innate‐type responses against inhaled protease allergen and IL‐332019

    • 著者名/発表者名
      Maruyama Natsuko、Takai Toshiro、Kamijo Seiji、Suchiva Punyada、Ohba Mai、Takeshige Tomohito、Suzuki Mayu、Hara Mutsuko、Matsuno Kei、Harada Sonoko、Harada Norihiro、Nakae Susumu、Sudo Katsuko、Okuno Toshiaki、Yokomizo Takehiko、Ogawa Hideoki、Okumura Ko、Ikeda Shigaku
    • 雑誌名

      Allergy

      巻: 74 ページ: 2237~2240

    • DOI

      10.1111/all.13831

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Innate Lymphoid Cells in the Induction of Obesity2019

    • 著者名/発表者名
      Sasaki Takaharu、Moro Kazuyo、Kubota Tetsuya、Kubota Naoto、Kato Tamotsu、Ohno Hiroshi、Nakae Susumu、Saito Hirohisa、Koyasu Shigeo
    • 雑誌名

      Cell Reports

      巻: 28 ページ: 202~217.e7

    • DOI

      10.1016/j.celrep.2019.06.016

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Endogenous IL-33 exerts CD8+ T cell antitumor responses overcoming pro-tumor effects by regulatory T cells in a colon carcinoma model.2019

    • 著者名/発表者名
      Xia Y, Ohno T, Nishii N, Bhingare A, Tachinami H, Kashima Y, Nagai S, Saito H, Nakae S, Azuma M.
    • 雑誌名

      Biochem Biophys Res Commun

      巻: 518 ページ: 331-336

    • DOI

      10.1016/j.bbrc.2019.08.058.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] IL-25 exacerbates autoimmune aortitis in IL-1 receptor antagonist-deficient mice2019

    • 著者名/発表者名
      Yoshizaki Takamichi、Itoh Satoshi、Yamaguchi Sachiko、Numata Takafumi、Nambu Aya、Kimura Naoyuki、Suto Hajime、Okumura Ko、Sudo Katsuko、Yamaguchi Atsushi、Nakae Susumu
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 9 ページ: 17067

    • DOI

      10.1038/s41598-019-53633-0

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Role of IL-25 in development of contact dermatitis2019

    • 著者名/発表者名
      中江 進
    • 学会等名
      第48回日本免疫学会学術集会

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公開日: 2021-01-27  

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