研究実績の概要 |
申請者はアレルギーの時間医学(「時間アレルギー学」)を推進している(Nakao et al. Allergy [Review] 2015)。これまでマスト細胞の概日時計がIgE受容体やIL-33受容体の発現を調節しIgEやIL-33によるマスト細胞活性化反応の強さを時間依存的にコントロールしアレルギー疾患の病態に関与することを明らかにした。「時間アレルギー学」を推進するために本年度は以下の2項目について研究を進めた。(1)マスト細胞における概日時計制御遺伝子の網羅的同定とその機能解析を行うために、マウス骨髄由来培養マスト細胞を樹立し遠心操作後12時間と24時間後のmRNAを採取しマイクロアレー法を施行した。この2点で大きな発現変動がある遺伝子群を約100個同定している。現在、抗CLOCK抗体を使ったChIP-Sequence法を用いてClock-controlled genes (CCGs )群を同定中である。(2)時計遺伝子Bmal1欠損マウスあるいはBmal1欠損マスト細胞を用いて時計遺伝子Bmal1がマウスの免疫老化及びにマスト細胞老化に与える影響について解析している。Bmal1欠損マウスでは40週令の時点で野生型マウスと比較して、卵白アルブミン抗原に対する免疫応答(抗体産生)および脾臓T細胞の反応性(IL-2, IL13産生)が減弱していた。また Bmal1欠損マウス骨髄由来培養マスト細胞は野生型マウス由来のマスト細胞に比較して増殖能と分化能が減弱していた。また老化マーカーであるLACZ陽性マスト細胞数もBmal1欠損により増加していた。これらの結果からBmal1欠損は個体老化、マスト細胞老化に関与する可能性が示唆された。現在、免疫系の減弱(抗体産生能の低下とT細胞活性化能の低下)及びマスト細胞機能の減弱が生じるメカニズムについて解析中である。
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