研究課題
ゲノムワイド関連解析(genome wide association study: GWAS)によって、これまで100を超える自己免疫疾患の候補遺伝子領域が同定されてきたが、その病因メカニズムは未解明な部分が多い。重要なメカニズムの一つとして遺伝子多型が選択的スプライシングに影響を与える、splicing QTL(sQTL)が考えられているが、その全容については明らかではない。本研究では、①long read sequencerを用いて、ヒト免疫細胞の各サブセットにおけるisoformの網羅的なプロファイルを作成し、②このプロファイルを用いて、より精度の高いsQTL解析を行うことで、ヒト免疫細胞のsQTLカタログを作成し、③このsQTLカタログと各種自己免疫疾患のGWASデータと統合解析することによって、自己免疫疾患の病態解析を行うこと、を目的とする。本年度は、末梢血の免疫サブセット由来のRNAを収集するとともに、細胞株由来のRNAを用いて、様々なcDNAライブラリー調整法の比較を行った。また、これらのcDNAライブラリーとMinIONシークエンサーのR9.4.1フローセルを用いて、long-read RNA-seqのテストを行った。その結果、SMARTer Ultra Low Input RNA Kit for Sequencing(TAKARA)を用いたライブラリー調整がより網羅的な解析を可能とすることが明らかになった。いっぽう、R9.4.1フローセル当初想定していたほどのクォリティのデータが得られなかったため、新規に発売されたR10.0.1フローセルによる解析を検討することとなった。
3: やや遅れている
本来の計画では、シークエンサー(MinION)のバージョンR9.4.1を使用予定であったが、解析の結果得られたコールレイトが期待されたものより低かったため、コールレイトが改善された、新バージョンR10.0.1を使用する必要ができたため。
今後は、以下の方法で,RNA-seqを行い,sQTLカタログを作成する。1) RNA-seq:MinIONシステム(R10.0.1)を用いてcDNAの網羅的なsequencingを行う。2) Isoformプロファイルの作成:GENCODEに登録されているisoform情報をベースに、新規のisoformを同定する。3) sQTLカタログの作成:既存のeQTLデータを,本研究で整備した各サブセットのisoformプロファイルをもとに再解析して,sQTL解析を行う。さらに 既存のGWASデータとsQTLカタログデータを統合解析する。新バージョンR10.0.1のフローセルを用いることにより、より精度の高い解析が可能となることが期待できる。
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Ann Rheum Dis.
巻: 77 ページ: 602‐611
10.1136/annrheumdis-2017-212149