研究実績の概要 |
ゲノムワイド関連解析(genome wide association study: GWAS)によって、これまで100を超える自己免疫疾患の候補遺伝子領域が同定されてきたが、その病因メカニズムは未解明な部分が多い。重要なメカニズムの一つとして遺伝子多型が選択的スプライシングに影響を与える、splicing QTL(sQTL)が考えられているが、その全容については明らかではない。本研究では、①long read sequencerを用いて、ヒト免疫細胞の各サブセットにおけるisoformの網羅的なプロファイルを作成し、②このプロファイルを用いて、より精度の高いsQTL解析を行うことで、ヒト免疫細胞のsQTLカタログを作成し、③このsQTLカタログと各種自己免疫疾患のGWASデータと統合解析することによって、自己免疫疾患の病態解析を行った。合計29種の免疫細胞サブセットを行い、14,942遺伝子において、計159,369 isoformの同定を行った。細胞種特異的発現を認めたisoformの多くは、main isoformと比較して、異なった転写開始点を利用したものであった。既存のeQTLデータの再解析によって、新たに同定されたisoformの一部は遺伝子多型によって発現量が制御されるsQTLであり、関節リウマチや全身性エリテマトーデスの候補遺伝子領域とco-localizeすることから、疾患の原因となっていることが示唆された。また、一部のisoformは、他の免疫疾患(COVID-19の重症化など)に関わるsQTLであることも明らかになった。これらのデータを整備したうえで、公共データベースで公開予定である。
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