研究実績の概要 |
本研究では、妊娠期における抗IgE抗体投与が、乳児期の抗原特異的なIgE抗体産生に及ぼす影響を明らかにし、アレルギー疾患の発症予防法開発に向けた基盤形成をすることを目的としている。今年度は、妊娠中の母親に対する抗IgE抗体投与によるIgE抗体産生抑制効果の持続期間の検討を行なった。妊娠中期および後期の妊娠マウスに抗IgE抗体もしくはIsotype control抗体を投与し、生まれた仔マウスに対して異なる週齢(0週、2週、4週、6週)から、鶏卵抗原(OVA)の感作を開始し、感作後の血清中OVA-IgEおよびOVA-IgG1を測定した。その結果、生後0,、2、4、6週後のいずれの時期から感作した場合にも、isotype control抗体を投与したマウスから生まれた仔マウスでは、OVA-IgE抗体の抗体価の明らかな上昇が観察されたが、抗IgE抗体を投与したマウスから生まれた仔マウスでは、OVAで感作してもOVA-IgE抗体の産生は完全に抑制されていた。一方、いずれの時期から感作した場合でも、両仔マウスは、同程度のOVA-IgG1抗体を産生していた。更に両仔マウスの脾臓細胞におけるOVA特異的サイトカイン(IL-4、IL-13、IL-17、IFN-γ)にも有意な差が認められなかった。以上のことから、抗IgE抗体を投与したマウスから生まれた仔マウスにおけるOVA-IgE抗体の産生抑制は、Th2細胞への分化を抑制した結果ではなく、直接、B細胞のIgE抗体の産生系を抑制した結果であると考えられる。
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