昨年度までに、C57BL/6マウスを用いた検討では、抗IgE抗体を投与したマウスから生まれた仔マウスは、生後6週間まで抗原特異的IgE抗体の産生が完全に抑制されることを見出した。また、新生児マウスに抗IgE抗体を投与した際にも同様に、抗原特異的IgE抗体の産生が抑制されることを見出した。BALB/cマウスでも、抗IgE抗体を投与したマウスから生まれた仔マウスでは、抗原特異的IgE抗体の産生が抑制されることが判明したが、その抑制効果は、生後2週以降に感作した場合には認められないことも明らかにした。 そこで今年度は、妊娠マウスに対する抗IgE抗体の投与が、仔マウスにおいて気管支喘息の発症を抑制し得るかどうかの検討を、ダニ抗原を連続的に吸入することで喘息様気道炎症を誘発するモデルを用いて行った。その結果、抗IgE抗体を投与したマウスから生まれた仔マウスと、Isotype抗体を投与したマウスから生まれた仔マウスの間で、気管支喘息様の気道炎症の程度に差がないことが明らかになった。ダニ抗原を連続的に吸入するモデルでは、その気管支喘息様炎症の誘導に、ダニ抗原特異的IgEを介するメカニズム(獲得免疫)と、ダニ抗原が組織を破壊することによって惹起される抗原非特異的な炎症惹起メカニズム(自然免疫)が関与しているとされている。乳児期と成人期の肺の免疫プロファイルを比較検討したところ、成人期とは異なり、乳児期の肺では獲得免疫系よりも自然免疫系が優位となっていることが判明した。そのため、妊娠中の抗IgE抗体が、生まれてきた仔マウスにおいてダニ抗原誘導性喘息様気道炎症を抑制しなかったものと考えられる。
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