研究課題
クリプトコックス抗原特異的T細胞受容体を発現するトランスジェニック(Tg)マウス(CnT-II)を用いることで作成した潜伏感染モデルマウスにて、本真菌に対する免疫記憶応答を解析し、以下の結果を得た。1)クリプトコックス感染CnT-IIマウスでは、2、3ヶ月後からは104CFU/マウス程度で潜伏感染状態となった。2)CnT-IIマウスでは、肺内でのIFN-γ産生が亢進するとともに、真菌の排除が促進した。3)潜伏感染マウスでは、真菌がマクロファージやリンパ球からなる肉芽腫に封入される形で存在した。4)感染マウスの肺内では、CD4+、CD8+エフェクターT(Teff)細胞が感染7日後をピークに増加し、その後減少した。5)CD4+メモリーT(Tm)細胞が感染2ヶ月後の肺内で顕著に増加した。6)肺内のCD4+Tm細胞では、エフェクターTm(Tem)細胞、CD69+またはCD69+CD103+Tm細胞が主に検出された。7)Trm細胞に加えて、CD69+Teff細胞が感染早期から検出され、IFN-γの主要な産生細胞であった。8)肺内のTrm細胞やCD69+Teff細胞はFTY720の投与によってほとんど影響を受けなかった。9)IFN-γを産生するTrm細胞やCD69+Teff細胞はCARD9KOマウスで顕著に減少したが、Dectin-1、Dectin-2、MincleKOマウスでは大きな影響はみられなかった。10)OVA特異的T細胞受容体を発現するTgマウスに本真菌を感染させると、OVA特異的ナイーブT細胞ではなく、非特異的T細胞からTrm細胞が出現した。これらの結果から、1)潜伏感染状態では、肺内で抗原特異的CD4+Tem細胞とともに、CD4+Trm細胞が増加すること、2)感染早期には、Trm細胞とともに、CD69+Teff細胞が多く検出され、IFN-γを産生すること、3)感染肺でのTrm細胞やCD69+Teff細胞の増加は、Dectin-1、Dectin-2、Mincle以外の何らかのCARD9上流分子に依存すること、4)これらは真菌抗原に非特異的なT細胞集団であることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
クリプトコックス抗原特異的T細胞受容体を発現するトランスジェニックマウスを用いることで作成した潜伏感染モデルマウスにて、感染後の肺におけるメモリーT細胞及びそのサブセットの動態、サイトカイン産生などの機能発現、CARD9及びその上流分子であるDectin-1、Dectin-2、Mincleによるこれらの制御機構について解析し、本研究の目的へ向けて着々と結果が得られつつある。
2018~2019年度に得られた知見をさらに発展させ、メモリーT細胞によるクリプトコックス潜伏感染の分子機構を明らかにし、免疫不全にともなう内因性再燃によるクリプトコックス症の発症メカニズムの解明へとつなげる。最終年度には、今年度に加えて、得られた研究成果を論文にまとめ、関連する英文誌に掲載して発表する。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 図書 (3件)
Microbiology and Immunology
巻: 63 ページ: 500-512
10.1111/1348-0421.12746