研究課題/領域番号 |
18H02852
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
杉田 昌彦 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 教授 (80333532)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ワクチン / 脂質免疫 / 結核 / エイズ |
研究実績の概要 |
研究代表者は、BCG接種アカゲザルを活用した脂質免疫のモデルシステムを立ち上げ、結核菌脂質特異的T細胞応答の実態を明らかにしてきた。他方、アカゲザルエイズモデルの詳細な解析から、ミリスチル化ウイルスタンパク質に由来するN末端リポペプチドフラグメントに対する細胞傷害性T細胞の存在を発見し、リポペプチド抗原提示分子LP1を同定した。本研究において、それらの脂質免疫の新知見を出発点として、脂質ワクチンという新しいワクチンコンセプトを検証し、確立する。リポペプチド提示分子として最初に同定されたアカゲザルMHCクラスI分子Mamu-B*098に着目し、アルファ3ドメインをマウスのものに置換したキメラタンパク質を発現するトランスジェニック(Tg)マウス系統を樹立した。さらに、ゲノムウォーキングの手法によりトランスジーンの染色体挿入部位を決定し、さらにTAPノックアウト(KO)マウスとの交配によりMamu-B*098 homozygous/TAP KOマウス系統を確立した。TAP KOマウスにおいては、脾臓CD8陽性T細胞が野生型マウスと比して激減しているが、Mamu-B*098 Tg/TAP KOマウスでは細胞数の回復が見られたことから、Mamu-B*098拘束性CD8陽性T細胞の存在が示唆された。このマウスにフロイントアジュバントとともにミリスチル化ウイルスタンパク質由来のリポペプチドを接種したところ、リポペプチドを認識してインターフェロンガンマを分泌するT細胞が確認されたが、その応答は必ずしも強いものではなかった。そこで、BCG菌体の細胞壁脂質をリポペプチドで置換したリポペプチド搭載BCGを用いたところ、顕著な感作が成立し、リポペプチド特異的応答が効率的に誘導できることがわかった。今後、このT細胞応答の質の評価を行うとともに、感作個体における防御免疫の成立を検証する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)ウイルスリポペプチドに対する個体レベルでの免疫誘導手法の確立において、試行錯誤の末、顕著な進展があった。リポペプチド搭載BCGを用いた感作が極めて有効であることを見出し、今後のワクチン戦略の端緒となる成果が得られた。 2)グルコースモノミコール酸に着目した抗結核脂質ワクチンの開発研究においては、CD1 Tg マウスが必ずしも効果的に機能しないこと、グルコースモノミコール酸とグルコースモノミコール酸合成酵素の共結晶構造の解明が遅れていることから、代替的な実験計画を検討している。
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今後の研究の推進方策 |
ウイルスリポペプチドに対するT細胞応答が効率的に誘導できる感作手法が見つけられたので、これをさらに洗練する。同時に誘導されるT細胞応答の質と時空間的変化、またブースト効果やその持続期間の検証を行う。最後に、ウイルス感染系を確立して、リポペプチドワクチン接種によるウイルス防御免疫の成立を検証する。抗結核脂質ワクチンについては、代替的な実験計画としてグリセロールモノミコール酸や好中球由来S100A9タンパク質を活用した方策の検討を進め、実践する予定である。
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