研究課題/領域番号 |
18H02853
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
永淵 正法 佐賀大学, 医学部, 特任教授 (00150441)
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研究分担者 |
高橋 宏和 佐賀大学, 医学部, 講師 (20607783)
安西 慶三 佐賀大学, 医学部, 教授 (60258556)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ウイルス / 糖尿病 / Stat2 / インターフェロン / エンテロウイルス受容体 / コクサッキーBウイルス / 感受性遺伝子 |
研究実績の概要 |
(1)EMC-Dウイルス感染DBA/2マウスの膵島組織を経時的に観察し、感染3日目以内の膵島組織は免疫細胞の浸潤はほとんど認められないが、インスリン染色が消失している領域が認められることを見出した。そこで、感染早期にFACSを用いて膵β細胞を単離し、遺伝子発現解析を行ったところ、DBA/2マウスの膵β細胞は、感染抵抗性B6マウス膵β細胞と比較し、多くの抗ウイルス遺伝子発現が低下していた。さらに、ネットワーク解析によって、Signal transducer and activator 2 (Stat2) 遺伝子が膵β細胞における抗ウイルス遺伝子発現に関連するハブ遺伝子であると推定した。すなわち、Stat2遺伝子発現はDBA/2マウスの膵β細胞特異的に、B6マウスよりも約40%低下していた。さらに、1型IFNを投与したマウスから膵β細胞を単離し、遺伝子発現解析を行ったことで、DBA/2マウスの膵β細胞は1型IFN刺激に対して反応性が乏しかった。DBA/2マウスは膵β細胞特異的なStat2遺伝子発現上昇の減弱によって感染防御に十分なウイルス抵抗性を獲得することができず、膵β細胞がEMC-Dウイルスによって破壊され、糖尿病を発症すると示唆された(BBRC 521:853-860, 2020)。 (2)マウス膵島にヒトエンテロウイルスが効率よく感染するために、ヒトエンテロウイルス受容体(hCAR)発現トランスジェニックマウスを作成中である。現時点で1コピー、3、コピー、26コピーの3つの系統が得られた。 (3)糖尿病誘発性が疑われているコクサッキーB群ウイルスB1~5それぞれ3株の増殖、感染価の測定を完了した。上述のモデルマウスに感染させることによりそれぞれのウイルス株の糖尿病誘発性を検定する準備が整ってきた。 さらに研究分担者が2型糖尿病患者における遺伝子多型の意義研究へと展開している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
EMC-Dウイルス感染DBA/2マウスの膵島組織を経時的に観察し、感染3日目以内の膵島組織は免疫細胞の浸潤はほとんど認められないが、インスリン染色が消失している領域が認められることを見出した。 そこで、感染早期における膵β細胞のウイルス抵抗性に着目し、EMC-Dウイルス感染2日目のDBA/2マウスから膵β細胞をFACSを用いて単離し、遺伝子発現解析を行った。この解析によって、DBA/2マウスの膵β細胞は、EMC-Dウイルス感染によっても糖尿病を発症しないB6マウスの膵β細胞と比較し、多くの抗ウイルス遺伝子発現が低いことを明らかにした。さらに、ネットワーク解析によって、Signal transducer and activator 2 (Stat2) 遺伝子が膵β細胞における抗ウイルス遺伝子発現に関連するハブ遺伝子であると推定した。実際、EMC-Dウイルス感染2日目のStat2遺伝子発現はDBA/2マウスの膵β細胞特異的に、B6マウスよりも約40%低下していることを明らかにした。さらに、1型IFNを投与したマウスから膵β細胞を単離し、遺伝子発現解析を行ったことで、DBA/2マウスの膵β細胞は1型IFN刺激に対して反応性が乏しくStat2遺伝子発現上昇が誘導されにくいことが明らかとなった。これらの結果から、DBA/2マウスは膵β細胞特異的なStat2遺伝子発現上昇の減弱によって感染防御に十分なウイルス抵抗性を獲得することができず、膵β細胞がEMC-Dウイルスによって破壊され、糖尿病を発症すると示唆された。本研究は論文とし発表することができた。(BBRC 521:853-860, 2020) 論文発表は2020年度中を目指していたが予定よりほぼ一年早く完成、しかるべき国際誌に受理され発表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
ウイルス糖尿病感受性遺伝子としてインターフェロンのシグナル伝達に関わるTyk2,Stat2の二つの遺伝子を同定することができたので、この知見を基盤にヒトに糖尿病を発症させる候補ウイルスであるコクサッキーB群ウイルス6系統のどの系統が糖尿病を発症させ易いのか、また、糖尿病を発症させるウイルス株があるのか、これからはウイルス側の糖尿病誘発性を検討することをヒトのウイルス糖尿病を正しく模倣するマウスモデルを作成するとともに候補ウイルスの準備を行なっている。研究分担者が2型糖尿病患者のTYK2遺伝子多型について論文執筆中である。 すなわち、マウス膵島にヒトエンテロウイルスが効率よく感染するために、ヒトエンテロウイルス受容体(hCAR)発現トランスジェニックマウスを作成中である。現時点で1コピー、3、コピー、26コピーの3つの系統を得ることができている。それぞれのマウス系統を繁殖させ膵島細胞に発現するhCARのレベルを、米国から輸入しているヒト膵島細胞と発現レベルを比較し、それぞれのトランスジェニックマウスのモデル動物としての評価を行っている段階である。将来はTYK2 ノックアウトマウスやDBA/2マウスとの交配により最高レベルのウイルス糖尿病感受性マウス系統を作成し、ウイルスの糖尿病誘発性を最高感度で検定することを目指している。 一方、糖尿病誘発性が疑われているコクサッキーB群ウイルスB1~5それぞれ3株、およびクサッキーB6ウイルス1株、総計16株を、愛知県衛生研究所から分与していただき、増殖、感染価の測定を完了した。それぞれの感染価は1x10の8乗/mlレベルであることが確認できた。この濃度であれば、攻撃するウイルス量についても半定量的な検討が行える準備が整ってきた。今後、上述のモデルマウスに感染させることにより、それぞれのウイルス株の糖尿病誘発性を検定することが可能である。
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