研究課題
ウエストナイルウイルス(WNV)は、時に致死性の脳炎・髄膜炎を惹き起こすフラビウイルス科の蚊媒介性ヒト感染性ウイルスである。世界の広い地域に分布し我が国への感染拡大の危険性が指摘されているが、実用的な治療薬やワクチンは未だ無い。研究分担者らによって見出された WNV に働く中和抗体は、同じフラビウイルス科の日本脳炎ウイルス(JEV)とも交差反応を示すという興味深い性質を持つ。我々はその分子機構を明らかにするために以下の研究を行った。まず、WNV 中和抗体を Fab 化した発現コンストラクト、および WNV のエンベロープタンパク質の発現コンストラクトを作成し、それらの発現精製を行い、結晶構造解析に十分な純度と量のサンプルを得た。それらを用いて結晶化を行い、X線結晶構造解析により複合体の立体構造を 2.6 Å分解能で決定した。2種類の抗原に活性を示すモノクローナル抗体の単離自体ユニークであり、それと WNV のエンベロープタンパク質複合体の立体構造解析は当然唯一無二である。明らかにした立体構造および変異体を用いた結合測定実験結果から、この中和抗体は JEV と WNV に保存されているArg388を認識し、また抗体L鎖CDRの特異性に許容範囲がある、という認識機構を明らかにすることができた。この知見は、フラビウイルスに共通の抗体医薬および合成低分子抗ウイルス薬の創薬を検討する上で重要な知見を与えると考えられる。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件)
Acta Cryst. section F
巻: 77 ページ: 29-36
10.1107/S2053230X20015514
PLoS One
巻: 15 ページ: e0229196
10.1371/journal.pone.0229196