研究課題
1.2018年度に研究施設の異動以降、遺伝子組換え細胞実験系とCRISPR/CAS9ゲノム編集を用いた細胞実験系の確立、遺伝子組換えウイルスやCre-LoxPシステムによる遺伝子組換え動物実験系を樹立し、引き続き研究を遂行している。2.糖・脂質・アミノ酸の栄養素代謝を司る経路として、mTOR経路の下流オートファジー・リソソーム経路に着目し、その調節因子Xの過剰発現・RNAiアデノウイルスベクターを用いヒト肝細胞へ遺伝子導入ている。その過剰発現細胞株では、アジレント社マイクロアレイを用いて網羅的解析を施行している。また、既に別課題にて確立したCRISPR/CAS9ゲノム編集の細胞実験系を用いて、調節因子X遺伝子の目的配列を破壊した変異細胞株の樹立を行い、その結果、X遺伝子のホモ変異細胞株、ヘテロ変異細胞株を作製できた。今後は、野生型細胞株を対照群として網羅的解析を検討する予定であり、上記の遺伝子導入の細胞株との比較を通して、各発現変化のある遺伝子の中から候補因子を選定している。3.上記の調節因子Xの過剰発現アデノウイルスベクター、また、肝臓内代謝を制御する候補因子Yの過剰発現アデノウイルスベクターを用いて、マウス肝臓に過剰発現したモデルマウスの解析を遂行している。特に、因子Yのモデルマウスにおいて、肥満モデルの全身の糖代謝と肝臓の局所的変化を認め、遠隔臓器に与える影響を示唆する結果が得られている。4.CRISPR/CAS9ゲノム編集技術を用いて、転写因子XおよびYの各目的Exonの両端にLoxP配列を組み込んだ遺伝子組換えマウス作製を遂行し、マウスジェノタイピングを行いつつ、両者のfloxマウスを獲得できた。
2: おおむね順調に進展している
2020度の研究実績と現在の進行状況、今年度への予定に関して、当該年度の研究計画書の内容を基に簡潔に記載した。1つに、オートファジー・リソソーム経路を制御する調節因子Xをターゲットとした研究では、細胞実験において、アデノウイルスによる過剰発現細胞株で網羅的解析を施行できた。また、CRISPR/CAS9ゲノム編集技術を用いて変異細胞株も作製できており、今後は網羅的解析も施行し、各比較検討を行う。そして、動物実験ではPreliminaryではあるが、全身の糖代謝や遺伝子導入した臓器局所的に変化を確認しているところであり、獲得できたfloxマウスを用いて解析を継続する。
本年度も研究計画に基づき、研究は継続する予定である。特に細胞実験では、CRISPR/CAS9ゲノム編集技術を用いて獲得できた、先天的にXの目的配列を破壊した変異ヒト肝細胞株(ホモ変異細胞株、ヘテロ変異細胞株)の網羅的解析を検討する。また、動物実験として、肝臓への調節因子XおよびYを導入したモデルマウス表現型の更なる解析と、神経系への介入を行い臓器連携の検討を行う。さらに、獲得できたfloxマウスを用いて、肝臓特異的Cre発現マウスとの交配により、肝臓特異的欠損マウスの系統確立と、その表現型の解析を行う予定である。以上のように、細胞実験系と動物実験系の解析を進めていき、栄養素代謝におけるX因子およびY因子の生理的意義と役割を解明する。
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大和証券ヘルス財団研究業績集
巻: 44 ページ: 58-61
帝京医学雑誌
巻: 43 ページ: 211-221