研究課題/領域番号 |
18H02859
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
山田 哲也 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (90400374)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 臓器間相互作用 / マイクロRNA / エクソソーム / 白色脂肪組織 / 膵β細胞 |
研究実績の概要 |
本研究では、マウスを対象とし、肥満やそれに伴うインスリン抵抗性によって白色脂肪組織から分泌されるエクソソームに含まれているmiRNA(以下、エクソソーム-miRNAと呼ぶ)が、膵β細胞増殖や機能に影響を及ぼす影響を検討する。次に、それぞれによって同定されたmiRNAを、インスリン分泌の低下により糖尿病を発症したマウスに投与し、治療応用への可能性を検討する。 高脂肪食投与によりマウスに肥満・糖尿病を誘導後に、血液中のエクソソームを分離、エクソソーム-miRNAのプロファイルを網羅的に解析したところ、これまでに54種類のエクソソーム-miRNAが増加していることが確認された。高脂肪食負荷によって白色脂肪細胞に生じる変化のうち、特にインスリン抵抗性が重要であると考えられたため、後天的脂肪細胞特異的インスリン受容体ノックアウトマウスを作成し、白色脂肪細胞のインスリン抵抗性が個体の耐糖能、膵β細胞の増殖、および血中エクソソーム-miRNAのプロファイルに及ぼす影響を検討した。その結果、後天的にインスリン受容体を脂肪細胞特異的にノックアウトしたマウスにおいて、白色脂肪組織の萎縮が認められ、インスリン抵抗性を伴う耐糖能の悪化が生じた。その際、膵β細胞のKi67陽性細胞数が増加し、膵β細胞の増殖促進が示唆された。これらのマウスの血清中エクソソームmiRNAを抽出し、miRNA-Seqにより網羅的に測定し詳細な解析を進めたところ、複数のエクソソーム-miRNAの増加が示唆され、qPCRによる解析でも確認された。これらのmiRNAをマウスから分離した初代培養膵β細胞に導入したところ、インスリンおよびKi67の転写に影響を及ぼすものが見出された。現在、このmiRNAが膵β細胞の増殖や機能に及ぼす分子メカニズムの解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウスに高脂肪食を与え肥満・糖尿病を誘導し、血液中のエクソソームを分離し、エクソソーム-miRNAのプロファイルを網羅的に解析したところ、これまでに54種類のエクソソーム-miRNAが増加していることを確認した。次に後天的脂肪細胞特異的インスリン受容体ノックアウトマウスを作成し、白色脂肪細胞のインスリン抵抗性が個体の耐糖能、膵β細胞の増殖、および血中エクソソーム-miRNAのプロファイルに及ぼす影響を検討した。その結果、後天的脂肪細胞特異的インスリン受容体ノックアウトマウスにおいて、白色脂肪組織の萎縮が認められ、インスリン抵抗性を伴う耐糖能の悪化が生じた。その際、膵β細胞のKi67陽性細胞数が増加し、膵β細胞の増殖促進が示唆された。これらのマウスの血清中エクソソームmiRNAを抽出し、miRNA-Seqにより網羅的に測定し詳細な解析を進めたところ、複数のエクソソームmiRNAの増加が示唆され、qPCRの解析でも確認された。これらのmiRNAをマウスから分離した初代培養膵β細胞に導入したところ、インスリンおよびKi67の転写に影響を及ぼすものが見出された。現在、このmiRNAが膵β細胞の増殖や機能に及ぼす分子メカニズムの解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
高脂肪食負荷により増加したエクソソーム-miRNAプロファイルと後天的脂肪細胞特異的インスリン受容体ノックアウトマウスより得られたエクソソーム-miRNAプロファイルを比較検討したところ、白色脂肪細胞のインスリン抵抗性によって増加する複数のエクソソーム-miRNAが見出され、miRNAの初代培養膵β細胞への導入実験によりインスリン及びKi67の発現に影響を及ぼすものが確認された。今後、このmiRNAが膵β細胞の増殖や機能に及ぼす分子メカニズムの解析を進める。また、今回見出されたmiRNAやそのanti-miRNAをモデルマウスに投与し、膵β細胞の増殖や機能に及ぼす影響も検討する予定である。
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