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2018 年度 実績報告書

肥満に伴うM2マクロファージ活性化障害とインスリン抵抗性の分子機構

研究課題

研究課題/領域番号 18H02860
研究機関東京大学

研究代表者

窪田 直人  東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (50396719)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード糖尿病
研究実績の概要

(I)肥満におけるM2Φa活性化障害の分子機構
MΦ特異的IRS-2欠損(MIRS-2KO)マウスは高脂肪食下において、耐糖能異常、インスリン抵抗性を呈した。そこでまず、脂肪組織における炎症性サイトカイン発現、浸潤 MΦ量、M1/M2a/M2b/M2cΦの量や割合を検討した。さらに脂肪組織を脂肪細胞分画とSVF分画に分離し、SVF分画を用いたFACS解析によるM1/M2マーカー遺伝子の発現を検討した。代表的なM2aΦマーカー遺伝子であるArginase1やFIZZ1、Ym1、Mgl1などの減少が認められたため、さらにその活性も測定し、確かに M2aΦ活性が減弱していることを確認した。またシグナル伝達機構を解析するため、IRS-2 の下流に存在すると考えられる、PI3K/Akt/FoxO1 経路について、IL-4 刺激後の Akt のリン酸化レベル、constitutively active(CA) FoxO1やFoxO1ノックダウンの系によるM2aΦマーカー遺伝子の発現変化を検討した。 PI3K 阻害薬のLY294002の添加によりIL-4によるArginase1やFIZZ1、Ym1、Mgl1活性化が減弱していた。さらにFoxO1を介した発現調節機構を検討するため、代表的な M2aΦマーカー遺伝子であるArginase1プロモーター領域をクローニングし、RAW264.7cells を用いてFoxO1による活性化を検討するとともに、FoxO1結合領域を同定し、mutationを入れることでその活性が失われることを確認した。この領域を用いてCHIP assayを行い、確かにFoxO1がこの領域に結合することを証明するとともに、EMSA解析によりFoxO1とcomplexを形成している分子についても検証した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成30年10月、条件設定のための予備実験の結果、独立して作用していると考えられたM2マクロファージ分画間に、当初は想定していなかった新たな相互作用の可能性を発見した。本研究遂行上、この作用の本質を見極めることが必要であるので、条件検討を行い、FACS解析と共培養実験による解析を行った上で各マクロファージ分画採取法確立本実験を実施する必要が生じた。いずれも解決しむしろ新たな展開が研究の飛躍につながっており、おおむね順調に進展していると考えられる。

今後の研究の推進方策

M2bΦはM1ΦとともにTNFαやIL-1βにより活性化され、IL-10を産生し炎症を抑制する。従って慢性炎症はM2aΦ活性低下とは独立に、同じリガンドによって活性化されるM1ΦとM2bΦの反応性の差による相対的M2bΦ活性化障害が原因となっている可能性がある。またM1Φ>M2aΦ+M2bΦ+M2cΦと考えた場合、Arginase1等を分泌するM2aΦとIL-10等を分泌するM2bΦ+M2cΦの病態形成における役割の違いは重要である。M2aΦにおけるIL-10の挙動がArginase1やFIZZ1、Ym1、Mgl1等とは異なることを踏まえ、CD206, CD301, CD200R, CD163, CD86, MHCII, LAMなどの表面マーカーを利用したFACS解析により各MΦを分離し、TNFαやIL-1βによる用量反応性やタイムコースをM1Φ、M2bΦ/M2cΦで比較検討すると共に、高グルコース、高インスリン、高パルミチン条件下等でその反応性の変化を検討し、肥満におけるM2bΦ/ M2cΦ活性化障害メカニズムを解明する。もし高インスリン条件下で障害を認めた場合にはMIRS-2KOマウスでこの表現型がrescueされるかどうか検討する。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件) 図書 (4件)

  • [雑誌論文] The RNA Methyltransferase Complex of WTAP, METTL3, and METTL14 Regulates Mitotic Clonal Expansion in Adipogenesis.2018

    • 著者名/発表者名
      Kobayashi M, Ohsugi M, Sasako T, Awazawa M, Umehara T, Iwane A, Kobayashi N, Okazaki Y, Kubota N, Suzuki R, Waki H, Horiuchi K, Hamakubo T, Kodama T, Aoe S, Tobe K, Kadowaki T, Ueki K
    • 雑誌名

      Mol. Cell Biol.

      巻: 38 ページ: e00116-00118

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] The Gα12/13-coupled receptor LPA4 limits proper adipose tissue expansion and remodeling in diet-induced obesity2018

    • 著者名/発表者名
      Yanagida Keisuke、Igarashi Hidemitsu、Yasuda Daisuke、Kobayashi Daiki、Ohto-Nakanishi Takayo、 Akahoshi Noriyuki、Sekiba Atsushi、Toyoda Tsudoi、Ishijima Tomoko、Nakai Yuji、Shojima Nobuhiro、Kubota Naoto、Abe Keiko、Kadowaki Takashi、Ishii Satoshi、Shimizu Takao
    • 雑誌名

      JCI Insight

      巻: 3 ページ: 97293

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Downregulation of macrophage Irs2 by hyperinsulinemia impairs IL-4-indeuced M2a-subtype macrophage activation in obesity2018

    • 著者名/発表者名
      Kubota Tetsuya、Inoue Mariko、Kubota Naoto、Takamoto Iseki、Mineyama Tomoka、Iwayama Kaito、 Tokuyama Kumpei、Moroi Masao、Ueki Kohjiro、Yamauchi Toshimasa、Kadowaki Takashi
    • 雑誌名

      Nature Communications

      巻: 9 ページ: 4863

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 入院糖尿病患者における食事摂取状況の検討2019

    • 著者名/発表者名
      澤田 実佳, 長谷川 陽子、高見 真, 関根 里恵, 山内 敏正, 窪田 直人
    • 学会等名
      第33回日本糖尿病学会関東甲信越地方会
  • [学会発表] 骨格筋におけるインスリン受容体基質の役割の解明2019

    • 著者名/発表者名
      相原允一,窪田直人,窪田哲也,林高則,桜井賛孝,岩本真彦,山内敏正,門脇孝
    • 学会等名
      第33回日本糖尿病・肥満動物学会年次学術集会
  • [学会発表] 2型糖尿病患者における体組成の特徴に関する検討2018

    • 著者名/発表者名
      窪田 直人、澤田 実佳、高見 真、中村 衣里、前 明日美、鈴木 亮、伊地知 秀明、関根 里恵、山内 敏正、門脇 孝
    • 学会等名
      第61回日本糖尿病学会年次学術集会
  • [学会発表] 肝移植後の骨格筋量の増加に対して周術期の栄養摂取が及ぼす影響2018

    • 著者名/発表者名
      長谷川陽子、長田梨比人、伊地知秀明、関根里恵、赤松延久、野尻佳代、裵成寛、田村純人、有田淳一、冨樫順一、金子順一、長谷川潔、窪田直人
    • 学会等名
      第36回日本肝移植研究会学術集会
  • [学会発表] 「肥満合併症としての肝疾患-NASHと肝細胞癌をどう捉えるか- 肥満に伴う選択的インスリン抵抗性の分子機構 肝臓のmetabolic zonation」2018

    • 著者名/発表者名
      窪田 直人, 窪田 哲也, 山内 敏正, 門脇 孝
    • 学会等名
      第39回日本肥満学会総会
    • 招待講演
  • [図書] 内分泌・糖尿病・代謝内科2018

    • 著者名/発表者名
      窪田 直人、佐々木 元大、笹子 敬洋、門脇 孝
    • 総ページ数
      5
    • 出版者
      (有)科学評論社
  • [図書] 医と食2018

    • 著者名/発表者名
      窪田 哲也、窪田 直人、門脇 孝
    • 総ページ数
      4
    • 出版者
      (公社)生命科学振興会「医と食」編集部
  • [図書] 腎と透析2018

    • 著者名/発表者名
      窪田 直人、門脇 孝
    • 総ページ数
      5
    • 出版者
      (株)東京医学社
  • [図書] 内分泌・糖尿病・代謝内科2018

    • 著者名/発表者名
      桜井 賛孝、窪田 直人、門脇 孝
    • 総ページ数
      5
    • 出版者
      (有)科学評論社

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公開日: 2021-01-27  

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