研究課題
(I)肥満におけるM2Φa活性化障害の分子機構MΦ特異的IRS-2欠損(MIRS-2KO)マウスは高脂肪食下において、耐糖能異常、インスリン抵抗性を呈した。そこでまず、脂肪組織における炎症性サイトカイン発現、浸潤 MΦ量、M1/M2a/M2b/M2cΦの量や割合を検討した。さらに脂肪組織を脂肪細胞分画とSVF分画に分離し、SVF分画を用いたFACS解析によるM1/M2マーカー遺伝子の発現を検討した。代表的なM2aΦマーカー遺伝子であるArginase1やFIZZ1、Ym1、Mgl1などの減少が認められたため、さらにその活性も測定し、確かに M2aΦ活性が減弱していることを確認した。またシグナル伝達機構を解析するため、IRS-2 の下流に存在すると考えられる、PI3K/Akt/FoxO1 経路について、IL-4 刺激後の Akt のリン酸化レベル、constitutively active(CA) FoxO1やFoxO1ノックダウンの系によるM2aΦマーカー遺伝子の発現変化を検討した。 PI3K 阻害薬のLY294002の添加によりIL-4によるArginase1やFIZZ1、Ym1、Mgl1活性化が減弱していた。さらにFoxO1を介した発現調節機構を検討するため、代表的な M2aΦマーカー遺伝子であるArginase1プロモーター領域をクローニングし、RAW264.7cells を用いてFoxO1による活性化を検討するとともに、FoxO1結合領域を同定し、mutationを入れることでその活性が失われることを確認した。この領域を用いてCHIP assayを行い、確かにFoxO1がこの領域に結合することを証明するとともに、EMSA解析によりFoxO1とcomplexを形成している分子についても検証した。
2: おおむね順調に進展している
平成30年10月、条件設定のための予備実験の結果、独立して作用していると考えられたM2マクロファージ分画間に、当初は想定していなかった新たな相互作用の可能性を発見した。本研究遂行上、この作用の本質を見極めることが必要であるので、条件検討を行い、FACS解析と共培養実験による解析を行った上で各マクロファージ分画採取法確立本実験を実施する必要が生じた。いずれも解決しむしろ新たな展開が研究の飛躍につながっており、おおむね順調に進展していると考えられる。
M2bΦはM1ΦとともにTNFαやIL-1βにより活性化され、IL-10を産生し炎症を抑制する。従って慢性炎症はM2aΦ活性低下とは独立に、同じリガンドによって活性化されるM1ΦとM2bΦの反応性の差による相対的M2bΦ活性化障害が原因となっている可能性がある。またM1Φ>M2aΦ+M2bΦ+M2cΦと考えた場合、Arginase1等を分泌するM2aΦとIL-10等を分泌するM2bΦ+M2cΦの病態形成における役割の違いは重要である。M2aΦにおけるIL-10の挙動がArginase1やFIZZ1、Ym1、Mgl1等とは異なることを踏まえ、CD206, CD301, CD200R, CD163, CD86, MHCII, LAMなどの表面マーカーを利用したFACS解析により各MΦを分離し、TNFαやIL-1βによる用量反応性やタイムコースをM1Φ、M2bΦ/M2cΦで比較検討すると共に、高グルコース、高インスリン、高パルミチン条件下等でその反応性の変化を検討し、肥満におけるM2bΦ/ M2cΦ活性化障害メカニズムを解明する。もし高インスリン条件下で障害を認めた場合にはMIRS-2KOマウスでこの表現型がrescueされるかどうか検討する。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件) 図書 (4件)
Mol. Cell Biol.
巻: 38 ページ: e00116-00118
JCI Insight
巻: 3 ページ: 97293
Nature Communications
巻: 9 ページ: 4863