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2018 年度 実績報告書

試験管内分化誘導に基づく膵β細胞の機能維持と恒常性維持の分子機序解明

研究課題

研究課題/領域番号 18H02861
研究機関東京工業大学

研究代表者

粂 昭苑  東京工業大学, 生命理工学院, 教授 (70347011)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード糖尿病 / 糖代謝 / インスリン分泌 / 多能性幹細胞 / 分化誘導 / 恒常性維持
研究実績の概要

これまで、ヒトiPS細胞からβ細胞への分化を促進する化合物について、モノアミンが有効であることを同定してきた。また、モノアミンのうちに、ドパミンが膵島において、脱分化を抑制する作用があることを見出した。今回の研究では、特にドパミンの作用にフォーカスして、膵島における作用機序について詳細に検討した。マウス膵ベータ細胞株であるMin6細胞株における、ドパミン合成酵素の強制発現(Gain of function)およびドパミン合成に対する阻害剤添加(loss of function)による影響、また、ドパミンを細胞内小胞に輸送するトランスポーター(VMAT2)の阻害剤による影響、など様々な解析を通して、解析を行った。全反射顕微鏡によるインスリンイメージングを用いた解析では、VMAT2阻害剤の処理により、膵島内の細胞でのインスリン分泌する細胞の割合が上がることが分かった。これらの結果から、ドパミンはすい臓β細胞の糖応答性インスリン分泌における抑制するシグナルであると考えられた。
さらに、新たに脱分化を抑制する新規な化合物の探索を行い、候補化合物を取得し、ヒトiP細胞由来の膵島細胞における作用について解析した。
一方、膵β細胞の恒常性維持の分子機序を解明するために、特にすい臓β細胞におけるインスリン発現におけるheterogeneity の意義を解明することを目指した。インスリン発現量の違いによる膵臓β細胞の機能的差異について解析するために、Insulin-GFPノックインヒトES細胞からインスリン陽性β細胞を作成し、インスリン発現量に応じて細胞を分取し、今後解析する予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

これまで同定した膵臓β細胞の数の維持に関与するシグナルとしてのドパミンシグナルについて、様々な実験を行い、膵島におけるドパミンシグナルの働きを調べた。in vitro の単離膵島を用いた実験や、マウス膵ベータ細胞株であるMin6細胞株を用いた実験から、ドパミンが膵島からのインスリン分泌の抑制シグナルであることが分かった。また、生きた膵島細胞を用いた全反射顕微鏡によるインスリン分泌イメージングから、ドパミン含量が減少した際には、膵島内の細胞でのインスリン分泌する細胞の割合が上がることが分かった。さらに、conditional VMAT2変異マウスを用いた実験も行った。膵臓β細胞において、ドパミンの小胞内輸送体であるVMAT2について、すい臓β細胞でのノックアウトマウスを作成して解析を行った。その結果、ドパミンによる抑制シグナルがβ細胞の維持に重要であることが分かった。
一方、化合物探索から、ほかのシグナル分子も同定されている。これらについてヒトiPS細胞の分化誘導系においてその機能解析を進めたところ、興味ある結果が得られている。さらに当初予定しているインスリン発現β細胞の不均一性についても解析を順調に進めている。

今後の研究の推進方策

膵臓β細胞のインスリン発現における不均一性については、Insulin-GFPノックインヒトES細胞株を用いた実験を引き続き行い、インスリン発現量の異なる細胞のふるまいについて、セルソーターを用いた解析を進める。RNA sequencing による遺伝子発現解析を行い、インスリンの発現による増殖とインスリン分泌能など、機能的な違いを示すかについて解析する。インスリン発現量に応じた分泌機能との相関性、糖濃度・化合物・増殖因子などのシグナル存在下による分化細胞が機能を維持できずに脱分化が進行する可能性について解析を進める。

また、ドパミンがどのようにβ細胞の機能維持に影響を及ぼすかについてさらに解析を進める予定。
既取得の分化促進作用を示す化合物についてその脱分化抑制活性について検討し、新たに脱分化を抑制する新規な化合物の探索を行い、ヒト膵β細胞の機能維持の分子機序を明らかにする。また、大規模遺伝子連関(GWAS)解析により2型糖尿病(T2DM)との関連について報告されている遺伝子のうち、患者の膵β細胞においてインスリン分泌能との相関性が報告されており、申請者らが作成したヒトES/iPS由来膵β細胞において発現をまず確認する。発現が確認されている遺伝子から解析対象を選定し、遺伝子改変ヒトiPS細胞株を作成し、分化細胞を作成し、その影響について解析する。

  • 研究成果

    (16件)

すべて 2018

すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 3件、 招待講演 7件) 産業財産権 (1件)

  • [雑誌論文] iPS cell elimination in a cell sheet by methionine-free and 42 °C condition for tumor prevention.2018

    • 著者名/発表者名
      Matsuura K, Ito K, Shiraki N, Kume S, Hagiwara N, Shimizu T.
    • 雑誌名

      Tissue Eng Part C Methods.

      巻: 24 ページ: 605-615

    • DOI

      10.1089/ten.TEC.2018.0228.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Different murine-derived feeder cells alter the definitive endoderm differentiation of human induced pluripotent stem cells.2018

    • 著者名/発表者名
      Shoji M, Minato H, Ogaki S, Seki M, Suzuki Y, Kume S and Kuzuhara T
    • 雑誌名

      PLosONE

      巻: 13 ページ: e0201239

    • DOI

      org/10.1371/journal.pone.0201239

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Inhibition of Cdk5 Promotes β-cell differentiation from ductal progenitors2018

    • 著者名/発表者名
      Liu KC, Leuckx G, Sakano D, Seymour PA, Mattssona CL, Rautioa L, Verdonck Yannick, Serup P, Kume S, Heimberg H, Andersson O
    • 雑誌名

      Diabetes

      巻: 67 ページ: 58-70

    • DOI

      doi.org/10.2337/db16-1587

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] 多能性幹細胞から膵臓β細胞への分化誘導研究2018

    • 著者名/発表者名
      粂 昭苑
    • 学会等名
      糖尿病と再生医療フォーラム in Nagoya
    • 招待講演
  • [学会発表] 多能性幹細胞を用いた膵臓β細胞の再生研究2018

    • 著者名/発表者名
      粂 昭苑
    • 学会等名
      第53回糖尿病学の進歩
    • 招待講演
  • [学会発表] メチオニン除去培地とコラーゲンビトリゲル薄膜を用いて分化誘導したヒトiPS細胞由来肝臓細胞を利用した薬物毒性試験系の構築2018

    • 著者名/発表者名
      柴田伊真,下道隆広, 渡邊輝彦, 山口宏之, 白木伸明, 粂昭苑
    • 学会等名
      細胞アッセイ研究会
  • [学会発表] 多能性幹細胞の未分化性維持と分化制御の分子基盤2018

    • 著者名/発表者名
      粂 昭苑
    • 学会等名
      第41回日本分子生物学会
    • 招待講演
  • [学会発表] Insulin2タンパクへのQ104del変異導入による自然発症1型糖尿病モデルマウスの作製2018

    • 著者名/発表者名
      Airi Inoue, Daisuke Sakano, Takayuki Enomoto, Mai Imasaka, Seiji Okada, Kimi Araki, Shoen Kume
    • 学会等名
      第41回日本分子生物学会
  • [学会発表] メチオニン除去培養によるヒトiPS細胞分化促進の機序解明2018

    • 著者名/発表者名
      日比滉大, 秋山智彦,洪実,白木伸明, 粂昭苑
    • 学会等名
      第41回日本分子生物学会
  • [学会発表] Insulin supplement is essential in differentiationg human induced pluripotent stem cells into pancreatic beta cells.2018

    • 著者名/発表者名
      Erinn Sim Zixuan, Nobuaki Shiraki, Shoen Kume
    • 学会等名
      The 16th Asia-Ocenia Congress of Endocrinology 2018
    • 国際学会
  • [学会発表] Generation of pancreatic beta cells from human iPS cells2018

    • 著者名/発表者名
      Shoen Kume
    • 学会等名
      The 16th Asia-Ocenia Congress of Endocrinology 2018
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Insulin2 Q104del (Kuma) mutant mice develop diabetes with dominant inheritance2018

    • 著者名/発表者名
      Sakano D,Inoue A, Enomoto T, Imasaka M, Okada S, Araki K, Kume S
    • 学会等名
      Joint Meeting of JSCB 70th & JSDB 51st
    • 国際学会
  • [学会発表] ヒトiPS細胞から膵臓β細胞への分化誘導の技術開発2018

    • 著者名/発表者名
      粂 昭苑
    • 学会等名
      日本糖尿病学会
    • 招待講演
  • [学会発表] 代謝による多能性幹細胞の分化制御2018

    • 著者名/発表者名
      粂 昭苑
    • 学会等名
      第6回がんと代謝研究会
    • 招待講演
  • [学会発表] 多能性幹細胞から膵β細胞への分化制御2018

    • 著者名/発表者名
      粂 昭苑
    • 学会等名
      第91回日本内分泌学会
    • 招待講演
  • [産業財産権] 糖尿病モデル動物2018

    • 発明者名
      粂昭苑、坂野大介、榎本孝幸、荒木喜美、岡田誠治
    • 権利者名
      東京工業大学、熊本大学
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      特願2018-076855

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公開日: 2019-12-27  

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