研究課題
①近位尿細管細胞におけるO-GlcNAc修飾の役割についての検討。近位尿細管特異的Ogt-KOマウスは、48時間絶食時に、細胞内の脂肪酸酸化障害によるATP産生の低下の結果、近位尿細管細胞の機能障害、アポトーシス亢進を呈した。プロテオーム解析を行った結果、近位尿細管特異的Ogt-KOマウスでは、パスウェイ解析で脂質代謝経路に大きな変動を認め、更なる解析より、その脂質代謝異常の原因には、脂肪酸エステル分解酵素であるCarboxylesterase1(CES1)の転写レベルでの発現低下、およびその転写因子Farnesoid X Receptor(FXR)の活性低下が関与することを明とした。さらに高脂肪食負荷時にも、近位尿細管特異的Ogt-KOマウスは近位尿細管細胞内に大量の中性脂肪蓄積を伴う細胞障害の悪化を認めた。②骨格筋におけるO-GlcNAc修飾の役割についての検討。骨格筋O-GlcNAc修飾の欠損により、運動中のAMPK活性化を介したグルコース利用の増大が確認された。③白色脂肪細胞におけるO-GlcNAc修飾の役割についての検討。白色脂肪細胞特異的Ogt-KOマウスは高脂肪食負荷時に痩せ型でインスリン抵抗性が増大する病態をとることが明らかとなっており、現在その分子機序を解明中である。④腸管上皮細胞におけるO-GlcNAc修飾の役割についての検討。腸管上皮細胞特異的Ogt-KOマウスは腸管からのグルコース吸収が低下するという表現系を呈する可能性があり、現在その分子機序を解明中である。⑤血管内皮細胞におけるO-GlcNAc修飾の役割についての検討。血管内皮細胞特異的Ogt-KOマウスは高脂肪食負荷時に痩せ型でインスリン感受性が亢進することが明らかとなっており、現在その分子機序を解明中である。
2: おおむね順調に進展している
本年度は予定した研究が順調に進み、一定の結果を得ることができている。
遺伝子改変マウスを用いた検討を中心に、O-GlcNAc修飾のLoss-of-functionが各臓器および組織 (白色脂肪肝細胞、血管内皮細胞、腸上皮細胞、膵β細胞)の機能維持にどの程度関与するかを明かとする。①Adiponectin-Creマウスを用いて作製した脂肪組織特異的Ogt欠損マウスでは、精巣上体脂肪および皮下脂肪組織における脂肪重量が減少し、耐糖能異常が悪化するという表現系が確認されている。同マウスのさらなる表現系解析、ならびに、単離培養を用い、白脂肪細胞の糖鎖修飾不全が脂肪分化異常を引き起こす分子機序を解明する。②血管内皮特異的Cre発現マウス (VEcad-BAC-CreERT2)を用い、内皮細胞特異的OGT欠損マウスを作製したところ、脂肪重量の減少を認めた。同モデルマウスを用いて、血管内皮糖鎖修飾とし脂肪組織形成の細胞間クロストークを検討する。③腸上皮細胞特異的Cre発現マウス(Villin-Cre)を用い、腸上皮細胞特異的OGT欠損マウスを作製したところ、同マウスにおいて通常飼育下での成長障害が確認された。さらに現時点で、腸上皮細胞特異的OGT欠損マウスの腸管上皮細胞では、ブドウ糖吸収に関わる輸送体の発現異常が確認されている。本年度は引き続き、腸管内の栄養素吸収過程における細胞内糖鎖修飾の役割を解明する。④膵β特異的Ogt欠損マウスの初期の表現系としてグルコース応答性インスリン分泌が障害されることをこれまでに報告している。現時点で、その詳細な分子機序はまだ明らかとされておらず、単離膵β細胞を用いて、その分子機序を解明する。
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Biochem Biophys Res Commun.
巻: 495 ページ: 2098-2104
doi: 10.1016/j.bbrc.2017.12.081.