• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2018 年度 実績報告書

糖代謝臓器における細胞内糖鎖修飾の網羅的機能解析-生理機能から糖尿病の病態まで

研究課題

研究課題/領域番号 18H02862
研究機関滋賀医科大学

研究代表者

前川 聡  滋賀医科大学, 医学部, 教授 (00209363)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2022-03-31
キーワード細胞内栄養シグナル / 糖尿病 / 糖尿病合併症
研究実績の概要

①近位尿細管細胞におけるO-GlcNAc修飾の役割についての検討。近位尿細管特異的Ogt-KOマウスは、48時間絶食時に、細胞内の脂肪酸酸化障害によるATP産生の低下の結果、近位尿細管細胞の機能障害、アポトーシス亢進を呈した。プロテオーム解析を行った結果、近位尿細管特異的Ogt-KOマウスでは、パスウェイ解析で脂質代謝経路に大きな変動を認め、更なる解析より、その脂質代謝異常の原因には、脂肪酸エステル分解酵素であるCarboxylesterase1(CES1)の転写レベルでの発現低下、およびその転写因子Farnesoid X Receptor(FXR)の活性低下が関与することを明とした。さらに高脂肪食負荷時にも、近位尿細管特異的Ogt-KOマウスは近位尿細管細胞内に大量の中性脂肪蓄積を伴う細胞障害の悪化を認めた。②骨格筋におけるO-GlcNAc修飾の役割についての検討。骨格筋O-GlcNAc修飾の欠損により、運動中のAMPK活性化を介したグルコース利用の増大が確認された。③白色脂肪細胞におけるO-GlcNAc修飾の役割についての検討。白色脂肪細胞特異的Ogt-KOマウスは高脂肪食負荷時に痩せ型でインスリン抵抗性が増大する病態をとることが明らかとなっており、現在その分子機序を解明中である。④腸管上皮細胞におけるO-GlcNAc修飾の役割についての検討。腸管上皮細胞特異的Ogt-KOマウスは腸管からのグルコース吸収が低下するという表現系を呈する可能性があり、現在その分子機序を解明中である。⑤血管内皮細胞におけるO-GlcNAc修飾の役割についての検討。血管内皮細胞特異的Ogt-KOマウスは高脂肪食負荷時に痩せ型でインスリン感受性が亢進することが明らかとなっており、現在その分子機序を解明中である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は予定した研究が順調に進み、一定の結果を得ることができている。

今後の研究の推進方策

遺伝子改変マウスを用いた検討を中心に、O-GlcNAc修飾のLoss-of-functionが各臓器および組織 (白色脂肪肝細胞、血管内皮細胞、腸上皮細胞、膵β細胞)の機能維持にどの程度関与するかを明かとする。
①Adiponectin-Creマウスを用いて作製した脂肪組織特異的Ogt欠損マウスでは、精巣上体脂肪および皮下脂肪組織における脂肪重量が減少し、耐糖能異常が悪化するという表現系が確認されている。同マウスのさらなる表現系解析、ならびに、単離培養を用い、白脂肪細胞の糖鎖修飾不全が脂肪分化異常を引き起こす分子機序を解明する。
②血管内皮特異的Cre発現マウス (VEcad-BAC-CreERT2)を用い、内皮細胞特異的OGT欠損マウスを作製したところ、脂肪重量の減少を認めた。同モデルマウスを用いて、血管内皮糖鎖修飾とし脂肪組織形成の細胞間クロストークを検討する。
③腸上皮細胞特異的Cre発現マウス(Villin-Cre)を用い、腸上皮細胞特異的OGT欠損マウスを作製したところ、同マウスにおいて通常飼育下での成長障害が確認された。さらに現時点で、腸上皮細胞特異的OGT欠損マウスの腸管上皮細胞では、ブドウ糖吸収に関わる輸送体の発現異常が確認されている。本年度は引き続き、腸管内の栄養素吸収過程における細胞内糖鎖修飾の役割を解明する。
④膵β特異的Ogt欠損マウスの初期の表現系としてグルコース応答性インスリン分泌が障害されることをこれまでに報告している。現時点で、その詳細な分子機序はまだ明らかとされておらず、単離膵β細胞を用いて、その分子機序を解明する。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2018 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)

  • [国際共同研究] Lee Gil Ya Cancer and Diabetes Institute(韓国)

    • 国名
      韓国
    • 外国機関名
      Lee Gil Ya Cancer and Diabetes Institute
  • [雑誌論文] Lack of O-GlcNAcylation enhances exercise-dependent glucose utilization potentially through AMP-activated protein kinase activation in skeletal muscle.2018

    • 著者名/発表者名
      Murata K, Morino K, Ida S, Ohashi N, Lemecha M, Park SY, Ishikado A, Kume S, Choi CS, Sekine O, Ugi S, Maegawa H.
    • 雑誌名

      Biochem Biophys Res Commun.

      巻: 495 ページ: 2098-2104

    • DOI

      doi: 10.1016/j.bbrc.2017.12.081.

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] 骨格筋におけるO-GlcNAc修飾の低下はAMPK蛋白発現の増加を伴う抗糖尿病および抗肥満作用を有する2018

    • 著者名/発表者名
      村田 幸一郎, 森野 勝太郎, 井田 昌吾, 大橋 夏子, Lemecha Mengistu, Park Shi-Young, 石角 篤, 久米 真司, Choi Cheol Soo, 関根 理, 卯木 智, 前川 聡
    • 学会等名
      第61回日本糖尿病学会年次学術集会
  • [学会発表] 近位尿細管のエネルギー代謝恒常性維持における蛋白質O-GlcNAc修飾の役割2018

    • 著者名/発表者名
      菅原 翔, 久米 真司, 金崎 雅美, 武田 尚子, 大澤 紀之, 柳田 素子, 荒木 信一, 前川 聡
    • 学会等名
      第61回日本腎臓学会学術総会
  • [学会発表] 近位尿細管における蛋白質O-GlcNAc修飾は脂質代謝の安定化を介して絶食時および肥満糖尿病状態での細胞障害を軽減する2018

    • 著者名/発表者名
      菅原 翔, 久米 真司, 金崎 雅美, 山原 康佑, 山原 真子, 武田 尚子, 大澤 紀之, 柳田 素子, 荒木 信一, 前川 聡
    • 学会等名
      第33回 日本糖尿病合併症学会
  • [学会発表] Protein O-GlcNAcylation Regulates Renal Lipolysis During Fasting and Diabetes2018

    • 著者名/発表者名
      Sugahara S, Maegawa H, Kume S, Yamahara K, Yamahara M, Takeda N, Osawa N, Kanasaki M, Yanagita M, Araki S.
    • 学会等名
      Kidney Week 2018 (American Society of Nephrology)
    • 国際学会

URL: 

公開日: 2019-12-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi