研究課題/領域番号 |
18H02863
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
下村 伊一郎 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (60346145)
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研究分担者 |
福原 淳範 大阪大学, 医学系研究科, 寄附講座准教授 (00437328)
喜多 俊文 大阪大学, 医学系研究科, 寄附講座講師 (10746572)
加藤 恒 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (20705214)
前田 法一 大阪大学, 医学系研究科, 寄附講座准教授 (30506308)
小林 祥子 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (80649111)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | アディポネクチン / T-カドヘリン / エクソソーム / セラミド / 間葉系幹細胞 / 受容体 / Favine / 動脈硬化 |
研究実績の概要 |
骨格筋再生は、アディポネクチン(APN)によって、T-カドヘリン(T-cad)依存的に促進されること、再生途上の筋細胞では核の中心化とともに、APNのMVB集積が誘導されること、筋細胞のExo産生にもT-cadを要することを報告した(Tanaka Y et al., Sci Rep 2019)。 APNの多様な臓器保護作用の多くは、7回膜貫通タンパクAdipoRを介する代謝亢進作用や、細胞表面に表出されたCalreticulinとの相互作用を介したオプソニン作用によって説明されてきた。生理的多量体APNはAdipoRやCalreticulinには結合せず、T-cad発現細胞に特異的かつ定量的に結合することを報告した(Kita S et al., Elife 2019)。 間葉系幹細胞(MSCs)はT-cadを発現し、APN添加に応じてExo産生が亢進することを見出した。圧負荷心不全(TAC)モデルにおけるMSCs投与による心機能改善作用は、MSCsのExo分泌に依存し、血中のAPNレベル、MSCsのT-cad発現に依存することを報告した(Nakamura Y et al., Mol Therapy, in revision)。 また、APNによるExo産生調節機構(Obata Y et al., JCI insight2018)を中心に、代謝調節機構との関係を総説に報告した(Kita S et al., JCI 2019)。 Favineの抗動脈硬化作用の機序を明らかにするため、Favine/ApoE ダブルノックアウト(DKO) マウスを用いて、血管の組織病理学的評価および炎症関連因子のmRNA発現の測定を行った。培養血管内皮細胞を用いてFavineの添加実験を行い、血管内皮機能や炎症関連因子の評価を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「APNによるExo生合成促進の意義と機序」については、個体老化とも密接に関係する骨格筋再生がExo生合成促進と密接に関連し、T-カドヘリン(T-cad)依存的にアディポネクチン(APN)によって促進されることを見出し、また再生医療として用いられる培養間葉系幹細胞(MSCs)にもT-cadが発現し、その心不全モデル治療効果が血中APN、MSCsのT-cad、Exo産生に依存すること、血中APNをPPARγアゴニストによって増加させることで、治療効果を促進できることを見出した。様々な組織MSCsにはT-cadが発現することを見出しており、APNの全身性の多様な臓器保護作用を考える上でも重要と考える。 「T-cad制御機構の解明とAPN作用ミメティクスの開発」では、培養内皮細胞(内皮腫瘍細胞)においてADAM12がT-cadを膜近傍領域で切断することを見出した。しかし、ADAM12は心血管にはほとんど発現せず、生理的意味は不明である。ADAM12の欠損は、圧負荷による心不全が強く進行することを報告した(Nakamura Y et al., AJP Heart 2019)。 「Favineの血管保護・血栓形成制御機構の解明」に関しては、Favine/ApoE ダブルノックアウト(DKO) マウスを用いて、血管の組織病理学的評価および炎症関連因子のmRNA発現の測定を行った。培養血管内皮細胞を用いてFavineの添加実験を行い、血管内皮機能や炎症関連因子の評価を行った。これらの検討から、Favineの抗動脈硬化作用には、既知の動脈硬化の発症と進展に関するメカニズム以外の機序が存在する可能性が示唆されつつある。
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今後の研究の推進方策 |
「APNによるExo生合成促進の意義と機序」については、組織常在性間葉系幹細胞(MSCs)の機能との関連を中心に、T-cadの組織特異的欠損マウスを作出し、APNの生理作用とT-cad、エクソソームとの関係をさらに深める。 「T-cad制御機構の解明とAPN作用ミメティクスの開発」では、エクソソーム産生促進の分子メカニズムを追求する。また、最近報告された、T-cadとの親和性を増強する変異APNを中心に、親和性の向上がエクソソーム産生促進機能の向上につながるかを検証し、治療応用の可能性を探る。 「Favineの血管保護・血栓形成制御機構の解明」に関してはApoE/Favineダブルノックアウトマウスの大動脈の網羅的発現解析結果から得られる知見をもとに、Favineの抗動脈硬化作用の機序を明らかとする。「Favine KOマウスの血栓形成機序の解明」に関しては、Favine蛋白質をヒト血小板に添加して凝集反応を調べる実験を計画している。
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