研究課題/領域番号 |
18H02870
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
金 昇晋 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (90346213)
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研究分担者 |
下田 雅史 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (30644455)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | エクソーム解析 / 乳癌 / 術前化学療法 / HRD / 感受性 / 予後 |
研究実績の概要 |
本研究は術前化学療法(NAC)施行乳癌患者において、NAC前に採取した癌組織を用いて全エクソーム解析を行い、乳癌の遺伝子変異プロファイルを行い、抗癌剤感受性や予後との関係を検討し、ゲノム情報に基づく高精度の個別化治療の開発を行うことを目的としている。 2020年3月までに130例でエクソームシークエンスを行い、120例で解析を行った。まず相同組み換え欠損(HRD)について注目した。120例のうち47例ではmicroarrayによりHRD scoreとエクソームシークエンスによるHRD scoreとを比較できたが、両者には強い相関を認めた。 120例を各サブタイプに分けてHRD scoreを検討した。triple negative乳癌は他のサブタイプ(liminal type, luminal-HER2 type, HER2 type)に比べ有意にHRD scoreが高く、HRD高値群(HRD score > 42)の割合も高率であった。次に相同組み換え関連(HRR)遺伝子異常とHRD scoreとの相関について検討した。germlineでHRR遺伝子に異常を認めたのは12例で、うち8例(66.7%)がHRD高値群であった。一方、somatic-HRR遺伝子異常(n = 27)とwild type(n = 81)におけるHRD高値群の割合はそれぞれ22.2%と19.8%で両群間には有意差は認めないが、ともにgermline-HRR遺伝子異常に比べ有意に低率であった。 NAC(paclitaxel-FEC)に対する感受性では、trastuzumab非使用群(n = 94)において、HRD高値群は低値群に比べて有意に病理学的完全奏功率が高く(39.1% vs 9.9%, p = 0.0034)、HRD scoreはpaclitaxel-FECの感受性予測因子の可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年3月末までに約160名の患者あるいは家族から本研究に参加の同意を得ており、概ね予定患者数に達している。また、エクソームシークエンスも130例で終了し、その解析も120例で終了している。この時点での解析結果をまとめ、学会発表および論文発表を予定している。 残りの対象についてもサンプルはすでに当教室で保管しており、すぐにエクソームシークエンスを行うことができ、次年度への研究準備も整っている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、さらに症例を追加し、乳癌の各サブタイプの症例数を増やすこと予定している。そして、サブタイプごとにHRD scoreと抗がん剤感受性との相関を再検討する。さらに抗癌剤感受性の予測因子として、引き続きgermlineあるいはsomaticにおける遺伝子変異やHRD scoreに加え、pathway異常、遺伝子コピー数変化、genetic signatureなどについて詳細な検討を行う。
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