研究課題
現在までのT細胞輸注療法が患者自身の細胞の利用に限られ、多くの患者にタイムリーに均質な治療を提供することを阻んでいる問題点に鑑み、申請者らは輸注T 細胞の内因性TCR発現や MHC発現を抑制し、非自己のT細胞を利用可能とする技術の開発を進めてきた。本研究ではこれまでの研究を発展させ、T細胞のみならずNK 細胞等も含めた宿主の各種免疫ネットワークからの攻撃を回避する高度な「ステルスT細胞」の開発を進め、腫瘍に対するT細胞療法の汎用化に資することを目指 す。またこの技術をT細胞以外の細胞種にも拡大し、移植治療の際に宿主の免疫ネットワークに認識されない「ステルス細胞」作成技術を開発し、免疫抑制剤に頼 らない次世代の移植医療の開発を行った。2020年度には以下の研究実績が達成された。1. 2019年度にはベータ2ミクログロビュリンに対するCRISPR/Cas9を搭載したレトロウイルスベクターを用いてMHC class Iの発現欠損T細胞を作成したが、CRISPR/Cas9には将来実用化の際に知財の問題が付随する。そこで、2020年度にはベータ2ミクログロビュリンに対するsiRNAを用いてMHC class Iの発現を抑制するレトロウイルスベクターを作成した。2. 本siRNA搭載ベクターを用いることによりT細胞のMHC class Iの発現を有意に抑制することに成功した。3. 特にPTA製剤を用いて作成したガンマデルタT細胞に対して本siRNA搭載ベクターを導入したところ、アルファベータT細胞に比較して極めて効率よくベクターが導入され、高効率にMHC class Iの発現を抑制することに成功した。以上より、独自のsiRNAを利用したウイルスベクターを用いてCRISPR/Cas9の知財の問題を回避し、各種免疫ネットワークからの攻撃を回避する高度な「ステルスT細胞」が作成可能となる。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2020 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 5件) 図書 (3件) 備考 (1件)
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