研究課題/領域番号 |
18H02873
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
三高 俊広 札幌医科大学, 医学部, 教授 (50231618)
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研究分担者 |
谷水 直樹 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (00333386)
吉川 大和 東京薬科大学, 薬学部, 准教授 (20274227)
須藤 亮 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (20407141)
水口 徹 札幌医科大学, 保健医療学部, 教授 (30347174)
深井 原 北海道大学, 医学研究院, 特任講師 (60374344)
市戸 義久 札幌医科大学, 医学部, 助教 (80452978)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 小型肝細胞 / HPPCs / SHPCs / Extracellular vesicles / miRNAs / 継代培養 / Integrin beta1-signal / 類肝組織 |
研究実績の概要 |
本年度は、健常な肝機能を付与するために計画した、(1)健常な肝細胞を外部から供給する方法の確立のために、1)ドナー細胞ソースの確保のために「HPPCsの特性解析をし、特異的にHPPCsを増幅する方法の開発」と2)移植細胞の生着と肝細胞の置換を効率よく行うために「胆汁排泄機構を有する組織体の形成方法」について検討した。また、(2)疲弊した肝細胞を活性化する方法の確立のために、1)内在性肝細胞を活性化する因子の同定を行った。 (1)HPPCsを効率よく増殖させるためにはlaminin111上に播種し無血清培養する必要がある。増殖するHPPCsはIntegrin alpha6beta;1(high )alpha3(high)を発現し、Integrin beta1-signalを介して増殖することが分かった。増殖する細胞は前駆細胞としての特性を5代継代しても維持していた(Hepatology Communications, 2020)。マウス肝細胞と胆管上皮細胞を用いて、胆汁排泄機構を持つ類肝組織をin vitroで形成させる方法を開発した。成熟肝細胞または小型肝細胞と胆管上皮細胞をコラーゲンゲル上で共培養し、コラーゲン/Matrigelを重層すると毛細胆管と胆管が接続しCanal of Hering(CoH)が形成され胆汁が胆管に流れる。小型肝細胞がより効率的にCoHを形成することが分かった(論文投稿中)。 (2)骨髄間葉系細胞(BM-MCs)が分泌するEVsが内在性肝前駆細胞(SHPCs)を活性化する。障害肝由来細胞Thy1細胞が分泌するEVsは、IL17RB signalを介して活性化するが、BM-MCsのEVsはIL17RB signalに加えてmiR146a-5pがSHPCsの増殖に寄与していることが分かった(論文投稿中)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に従い研究を進めている。それぞれのテーマについての進捗状況を記載する.(1)健常な肝細胞を外部から供給する方法の、1)細胞ソースを確保するために、①HPPCsのself-renewalの機序と娘細胞供給についてはほぼ解明できた(Hepatology Communications, 2020)。②娘細胞を増幅し、分化誘導する手法の開発については、現在研究を進めている。③成熟肝細胞を小型肝細胞に転換する手法の開発については、現在研究を始めたところである。④ヒト小型肝細胞については、研究分担者の深井(北大)がヒト正常肝組織から効率よく分離する方法の確立に努めている。2)ドナー細胞の生着と疲弊した既存肝細胞との置換するために、①肝組織をin vitroで創出する手法の開発を行い、マウス小型肝細胞と胆管上皮細胞との共培養により、肝細胞間に形成される毛細胆管と胆管が接続し、肝細胞が分泌する胆汁を胆管に輸送可能な組織を作ることが出来た(論文投稿中)。現在、iPS細胞由来ヒト肝細胞を用いて組織が形成出来ないか検討している。②機能細胞を移植する手法の開発はまだ手つかずである。 (2)疲弊した肝細胞を活性化する方法について研究のうち、①疲弊した肝細胞を活性化する手法の開発については、成熟肝細胞が分泌するEVs中に含まれる活性化因子の同定を進めている。②内在性肝前駆細胞の活性化因子の同定については、骨髄間葉系細胞が分泌するEVs中に存在するmiRNAs及びサイトカインを同定した。小型肝細胞に対する増殖促進作用は確認した(論文投稿中)。③活性化因子を病態モデル動物に投与するために、骨髄間葉系細胞に当該miRNAをトランスフェクションし、分泌するEVs中に濃縮し、それをラットに投与し内在性肝前駆細胞の増殖を促進するか検証している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度も当初の研究計画に従い研究を進める予定である。 (1)健常な肝細胞を外部から供給する方法の、1)細胞ソースを確保するために、②娘細胞を増幅し、分化誘導する手法の開発については、各種シグナル阻害作用のある低分子化合物を主体にProgeny細胞の増幅と成熟化を誘導できる分子を同定し、成熟肝細胞の大量培養を可能にする手法の開発を行う予定である。③成熟肝細胞を小型肝細胞に転換する手法の開発についてについても、低分子化合物の中でHPPCs細胞を誘導できる因子の同定を行う。④ヒト小型肝細胞については、研究分担者の深井(北大)がヒト正常肝組織から効率よく分離する方法の確立を行い、ヒト成熟肝細胞の大量増幅法の開発を行う。 2)ドナー細胞の生着と疲弊した既存肝細胞との置換するために、①肝組織をin vitroで創出する手法の開発については、ヒト肝細胞で可能か検証するためにヒトiPS細胞由来肝細胞を用いての研究を進めている。また組織工学的手法を用いて同組織を大量に作製する手法についても研究を行っている。②機能細胞を移植する手法の開発を行う。 (2)疲弊した肝細胞を活性化する方法について研究については、①成熟肝細胞が分泌するEVs中に含まれる活性化因子の同定し、病態モデル動物肝臓に投与し、病態の改善が見られるか検討する。②内在性肝前駆細胞の活性化因子の同定については、同定したmiRNAsを病態モデル動物肝臓に投与し、内在性肝前駆細胞が動員され病態が改善するか検討する予定である。③成熟肝細胞由来EVs中の活性化因子やThy1陽性細胞あるいは骨髄間葉系細胞由来の活性化因子を肝硬変モデル動物の肝臓に投与し、病態の改善が見られるか検証する予定である。
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