ヒトiPS細胞由来の肝前駆細胞(hiPS-HE)、血管内皮細胞(hiPS-EC)、間葉系幹細胞(hiPS-STM)に加え、hiPS細胞から誘導した神経幹細胞(hiPS-NCC)を共培養し、胆汁分泌可能な胆管、および動静脈、神経からなる門脈域を有する微小肝組織構築を試みた。4種類の細胞の割合や、混合のタイミングを調整したところ、vitroではhiPS-NCCの割合を少なくすることによりアルブミン産生能を低下させない条件が確立できた。また、hiPS-NCCがhiPS-ECからなる血管をカバーし、hiPS-STM同様血管を安定化させる効果があることが観察された。 加えるhiPS-NCCの割合、タイミングや、混入法を検討するために、生体肝組織内での門脈域の構築過程を胎生期のマウスから生後早期のマウスを用い組織標本と神経、胆管、血管のマーカーに対する免疫染色を行うことにより再検討した。その結果、肝内胆管と神経は共に、出生前後に肝門近傍の門脈周囲間質から発生し、門脈域を形成しながら、肝末梢の門脈域に向かって密度が上昇していくことが観察された。そこで、hiPS-NCCを初めから肝芽に加えるのではなく、hiPS-HE、hiPS-EC、hiPS-STMからなる肝芽をhiPS-NCCを3次元培養して得られた神経線維の上で培養したところ、共培養7日目で、CK19陽性の胆管細胞に分化した集団が、神経、血管の伴走した胆管状の突起を形成し、門脈域様の形態を呈していることがvitroの肝芽内で観察できた。また、この条件で作成した肝芽は、アルブミンの分泌が多い傾向にあった。これまで、マウス頭蓋に作成したクラニアルウィンドウに移植した肝芽では、CK19の胆管細胞に分化した細胞は嚢胞状の形態をとることがほとんどであったが、現在、この条件で作成した肝芽をクラニアルウィンドウに移植する実験を継続中である。
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